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2005年12月15日 (木)

構造設計の偽造事件 7

昨日の証人喚問における姉歯元建築士の証言以来、
建築士の立場の低さがマスコミでクローズアップされているが、
それについては書きたいことがある。

私は親しく協力している工務店はあるが、
これまで不動産業者とは一切付き合ってこなかった。
世の中すべての不動産業者を否定するものではないが、
結局は今回の構造強度偽装問題のように
これに似たり寄ったりのようなことになるのである。
それがわかっているから、私はそうした「構造」の中に身をおかずに
完全に独立して建築活動をしてきた。
設計は何らかの圧力の下で行ってはならない。
独立して公正でなくてはならないのだ。
開発業者(不動産業者)と施工者(建設会社・工務店)の間に入って、
それらが組んでしまっては、結果的に行く先は、
もうみなさんお分かりの通りである。

まわりを見回して、日々数多くの建築がなされている。
それで「建築は儲かるでしょう」とよく言われる。
しかしそれらのほとんどが、建売住宅や今回のようなマンションで
ぜひ今度、機会があったら確認してみていただきたい。
要するにそういう「構造」の中に属して、
つまりは開発業者たちの指導下になくては、仕事がないのである。
ないといったら極端だが、限りなく少ないのが現状だと思う。
私はそういう「構造」には属さずに、よって個人的に営業もしているが、
個人では極めて仕事を取りにくいというのが現実である。

しかしこの「構造」だが、何もこれらの悪質開発業者のみならず、
これはもう今のこの「社会」全体の問題だと思う。
施主(建築主)が自分の建築に対して、
同様の圧力を加えてくることもあるからである。
以前の話だが、今でも思い出すだけで腹が立ってくるが、
こんなことがあった。
ひとつの敷地に姉妹で二軒の家を建てるという話で、
私はその妹の方から依頼を受けて話に参加していたのだが、
私が建築の構想を作り、工務店には資金計画を作ってもらい、
煮詰まってきたところで、初めてその姉妹がそろったのだが、
そうしたらその姉のほうが、とんでもない話だが、
要するに予算オーバーということで、設計・監理料に関して、
「あんた若いんだから、赤字でやりなさいよ」って、
一体何を言い出すのである?耳を疑った。
「何で知りもしないあなたのためにただでやらなきゃならないんですか」
頭にきたので、言い返してやった。
言い合いになったので、そこにいた工務店の社長が
「まあまあ」という形で治めたが、
しかし私はこんな人と仕事はできないと感じた。
こんな人たちと決して付き合えない。
しかしそういう場面になった場合に
私のように引き下がる(仕事から下りる)のか、
それとも「ごもっともです」といって、いい顔をして、
裏で鉄筋を抜くのか?どちらかなのだ。
よく考えてほしい。
建築は人と人との信頼の上に成り立ち
その信頼がない場合に偽造か手抜きが行われる。
私は「仕事は選ばないが、人は選ぶ」ことにしている。

その他いろいろな話はあるが、
とにかく世の中が価格競争になっているので、
まず人の足元を見てくるというのが常識になっている。
それが困る。無理難題が多い。
とても不可能な予算を提示されることもある。
「設計事務所はあんたのとこだけではないんだよ」というやつである。
そういう場合、仕方ないので、
「無理に今回やらなくてもいいんじゃないですか」と
自然に話が納まるようにするのか、
正規の見積(予算オーバー)を持っていって、
相手の方から断ってもらうか、どちらかである。
よく考えてほしい。ここでも。
その金額でも進んで仕事を引き受けてしまうところがでてくるのである。
やはりここでも、裏で鉄筋を抜いたり、手抜きをするか、
結局はそういうことなのだ。
やるか、やらないかである。

こんなことで私はこの何年かでずいぶん仕事を逃したし、
そして良心的にということでやっていると仕事がない。
それでさらに今回の構造強度偽装問題である。
一級建築士の信頼が失われた。
正直なところ、今のこの社会で、
私はこれからの未来に対して、極めて不安だ。
何も良いことを思い描けない。
もう年末だけど、来年は良い一年になってほしいと思う。
しかしこの今回の問題、これはこれだけでは済まされないであろう。

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