« 第1481回N響定期公演 | トップページ | セルジュ・チェリビダッケ 8 »

2006年4月16日 (日)

フィラデルフィア管弦楽団2004/2005

クリストフ・エッシェンバッハ指揮フィラデルフィア管弦楽団による
チャイコフスキーの交響曲第5番(2005年5月のライブ)である。
私は5月20日横浜みなとみらいホールにおける
フィラデルフィア管弦楽団の来日公演で
まさにこのチャイコフスキー第5番を聞いたので、
こうしてCDで再び聞くといろいろなことが思い出されて、
ついうれしくなってしまう。
日本へと旅たつ直前の演奏会で収録されたのだろう。
しかし実演を聞いて、少し思いが強すぎたのか、
会場でのあの音に包まれる感じ、というのは、
フィラデルフィア・サウンドもずいぶん変わったっていわれるけれど、
しかしあのエッシェンバッハの濃厚な歌い方で
チャイコフスキーの華麗な音色を存分に堪能して、
あの贅沢な興奮の中にいて、そのことを思うと
やはりCDというのは、ちょっと冷静な仕上がりに聞こえてしまうな
というのは感じられた。それは仕方ないことか。
SACD仕様なので、もう少し会場の空気を伝えるような
豊かな広がりある音響を期待していたのだが、
意外と落ち着いた仕上がりのような気もして残念。
レコード会社の音作りに対する意向もあると思うのだが。
しかし一方で感じるのは、このCDの魅力というのは、
エッシェンバッハの強い思い入れによって、
非常に細やかに表現が創り上げられていく
その音楽の極めて繊細な部分を決して逃さないのだという
作り手の徹底した姿勢も伝わってくる。
聞いていると非常に透明感のある清々しい印象だが、
しかし第4楽章が終わると同時に会場から熱い拍手が起こって、
抑えきれないような興奮が噴出する様子が収録されていて、
実際の会場における熱気や音楽に心酔する聴衆たちの想いは、
想像をはるかに上回るものがあったのだと、
そのことはこのCDを聞いていても何となく感じられる。
エッシェンバッハのコンサートとはそういう存在なのである。

後半はエッシェンバッハのピアノで
チャイコフスキーの「四季」から6月「舟歌」までが収録されているが、
これは私としては最高の喜び。
エッシェンバッハのピアノが聞きたく聞きたくて!
軽めの音色でここでも極度に繊細な心で
丁寧に丁寧に音楽と接していこうというような
何とも美しく、楽しく、悲しく、幸福な時間である。
ルネ・フレミングと録音したシューベルトの歌曲集のときと印象は近い。
細やかな表現に実に豊かな表情を与えて、
しかしそれはとにかく繊細さの結晶のような印象であり、
聞いているこちらもエッシェンバッハと気持ちを同じくして、
優しい心で大切に接しないといけないのである。
何と素晴らしい。エッシェンバッハは本当に最高の人だ。
こんなに美しい音楽を聞かせてくれる人はいない。
ここでのチャイコフスキーの小品を聞いていると
ふと思ったのだが、一見非常にシンプルなように思えて、
しかしその音楽を受け入れて、そこに踏み込んでいくと
何とも豊かな世界が広がるという、
エッシェンバッハの音は、今では実に色彩があって、
明るい響きに姿を変えているけれど、
実は1960年代から70年代における
ピアノでの演奏をたくさん聞かせていた時代と
今でも何にも変わっていないんだというのを少し感じた。
エッシェンバッハのピアノ演奏は、
今ではなかなか聞くチャンスがないが、
もちろん指揮者としての活動もこれまで通り、
ますます充実させてほしいと思うけれど、
しかしこのような形で、ちょっとずつでいいから
ぜひピアノも聞かせてほしいものである。
このCDの最後の曲が、有名な「舟歌」だが、
何ともいえない気持ちにしてくれる、この素晴らしさは、
決して言葉では表現できないのである。

ONDINE ODE 1076-5

「クリストフ・エッシェンバッハ」に関する記述はホームページにもございます
http://homepage3.nifty.com/tsukimura/

|

« 第1481回N響定期公演 | トップページ | セルジュ・チェリビダッケ 8 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/121598/9621784

この記事へのトラックバック一覧です: フィラデルフィア管弦楽団2004/2005:

« 第1481回N響定期公演 | トップページ | セルジュ・チェリビダッケ 8 »