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2006年4月28日 (金)

アルフレッド・ブレンデル 2

先日、ふと急にブレンデルが聞きたくなって、
ブラームスのピアノ協奏曲のCDを出したのだが、
今日はその続きというか、シューマンのピアノ協奏曲である。
1980年代のブレンデルは、リストの「巡礼の年」を録音したり、
シューベルト・チクルス、変奏曲ばかりを集めたプログラム、
そして90年代に入って、ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏と
ロマン派の作品や特にベートーヴェンのソナタで
ブレンデルならではの濃密な演奏を聞かせていたのだが、
それがここでのシューマンのピアノ協奏曲を聞いたときに、
あれ?何かが違うと、とにかく驚かされたのである。
ここでのシューマン(協奏曲)の録音が1997年9月であり、
後半に収められている幻想曲が同じく11月の録音。
その後のブレンデルは、モーツァルトのピアノ協奏曲やピアノソナタで
実に力が抜けて、軽やかさや自然な流れが魅力の演奏を聞かせているが、
私が思うところ、ここでのシューマンのあたりで
ブレンデルは少しずつ変わりはじめたのではないかと。

この1997年録音のシューマンのピアノ協奏曲では、
巨匠クルト・ザンデルリンクと共演しているのが興味深いのだが、
ザンデルリンクの大きな広がりの感じられる音楽に支えられて、
ブレンデルもまたゆったりと響きをくっきり聞かせて、
シューマンのロマンティックな表現を
実に丁寧に処理しているのが印象的であった。
明瞭に一音一音がよく聞こえてくるというのが、
聞き手に新鮮な感覚を与えたりもするのだが、
しかし一方でこれはまさに巨匠風の音楽作りでもあり、
緊張感と迫力で一気に突き進むようなシューマンに比べ、
ブレンデルは穏やかに急がぬ足取りを楽しんでいるような、
最初に聞いたときには、正直な感想として、
その変貌には驚きを隠せなかったのである。
ある程度モノクロ的な傾向も感じられるし、
この渋さは、枯れた中にある味わいというか。

でもここでのシューマンもまた、今聞くと少し感想は違っており、
表現に関する、基本的なところでは、その通りなのだが、
情熱的なシューマンではないけれど、
しかしその表情は実に豊かであり、ブレンデルの長年の芸風で
何とも香りたつようなロマンティックに心のこもった演奏なのである。
激しさや力強さ、音楽の緊張感や迫力は、以前に比べ弱まっているかもしれない。
ある程度、淡白な一面や感情を抑制して音楽に向き合っている部分もあるのだが、
しかしだからといって、シューマンのロマンティックな音楽が失われることはない。
近年のブレンデルは、本当に素晴らしい。
作為的な表現はますます聞こえなくなり、
無理のない、ある意味淡々と弾き進めているのだが、
そこからにじみ出てくる、音楽の深い味わい、それに感動するのである。
レパートリーに関しては、古典派を中心にシューベルト、シューマンと
最近は特に作品を限定して取り組んでいるようだが、
しかしブレンデルほど、じっくり聞かされてしまうピアニストもいなくて、
この巨匠の芸をこれからも聞き続けていきたいものである。
考えてみると長く来日していないが、またブレンデルを聞きに行きたい。

PHILIPS 462 321-2

「アルフレッド・ブレンデル」に関する記述はホームページにもございます
http://homepage3.nifty.com/tsukimura/

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