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2006年5月25日 (木)

ティーレマン「パルジファル」

2005年6月のウィーン国立歌劇場でライブ収録された
ワーグナーの舞台神聖祭典劇「パルジファル」。
クリスティアン・ティーレマンの指揮、
ドミンゴのパルジファル、マイアーのクンドリー、
フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒのグルネマンツ、
ファルク・シュトルックマンのアンフォルタス、…
このときを逃したら、こんな豪華なキャストは不可能だと
ティーレマンが登場するのを狙って録音したのだろう。
この少し前の1月にはラトルが指揮していたようなので、
そっちも興味あるのだが、しかしまずは、
ティーレマンの「パルジファル」がCD化されたことは喜ばしい。

ティーレマンが指揮した「パルジファル」を最初に聞いたのは、
バイロイト音楽祭2001における録音である。
ティーレマンのイメージって、その当時に思っていたのは、
どっしりとした響きで、ゆったりと大きく音楽を運んでいくような、
そういう「パルジファル」なのかと思って聞いたのだが、
実際は引き締まった印象で、響きも渋く、
モノトーンな世界が厳粛さを表現する、少し意外な感じでもあった。
今聞くと全然印象は違ってくるかもしれないけど…。
それから時間がたって、今回はウィーンにおける演奏だが、
ティーレマンは、またずいぶん進化しており、興味深い。
第1幕など、柔らかい音色を特に効果的に
繊細な表情を丁寧に描き出していく感じで、
かつての雄大なイメージよりも
細部における音の意味を深く追求していくような
そんな「パルジファル」である。

しかしちょっと、これは私の問題だが、
去年はブーレーズのバイロイトにおける録音を繰り返し聞いて、
今回のティーレマンが、今年はじめて聞く「パルジファル」になるのだが、
耳が完全にブーレーズの響き、音楽進行に慣れてしまっていて、
ティーレマンはどうしても緩い印象を受ける。
ブーレーズは独特な「パルジファル」を構築しているので、
それと比較してはいけないと思うのだが、
第1幕では、ティーレマンの音に耳を慣らすのに苦労してしまった。

やはりという印象だが、第2幕へ進むとずっと音が鳴り出す。
このような場面の変化に思い切った飛躍を展開させる、
こういうところがティーレマンらしさであり、魅力であり、
音楽に一気に引き込まれてしまう。
ある意味、連れて行かれるという感じである。さすがだ。
間の使い方も絶妙であり、とにかくすごい効果。
音楽もますますしなやかになってくるし、夢中になってしまう。
第2幕は、花園における色彩的な場面や
クンドリーの接吻によりパルジファルが目覚める!
クリングゾルが放った槍がパルジファルの頭上で止まるという奇跡、
見せ場、聞かせどころ、この上なく魅力的な音楽が流れるが、
ティーレマンは音楽に特長付けをしていくのがうまくて、感動する。
ブーレーズだと、そういう部分を淡々と進めていくところがあり、
流れという意味では、それほど心地よいことはないのだが、
一方のより起伏の大きいティーレマンの演奏は、
そこにはまりだすと、抜け出せなくなるような力をもっている。

そして第3幕、再び厳粛な音楽である。
聖金曜日の音楽として有名な場面、最も感動的だが、
じっくりと丁寧にその深まりを確かめながら歩んでいくような
ティーレマンはかなり以前にフィラデルフィア管弦楽団と
ワーグナーの管弦楽作品集を録音しており、
そこでも聖金曜日の音楽が収録されているが、
ここでの清らかさ、透明な響きといったら、
もう比べ物にならないほどの素晴らしさである。
清らかで透明な美しさ、ちょっとこれは
ティーレマンの普段からの重厚な音楽作りからすると
どうしてしまったのだろう?本当にすごい。
ティーレマンも進化しているのである。
ウィーン国立歌劇場の音色というのもあると思うが、
ティーレマンがこういう音を引き出すなんて!
そして後半は、大聖堂におけるティトレルの葬儀へと進むが、
ここでは先ほどまでとは対照的に壮大な管弦楽へと発展していき、
しかし響きは荘厳にして、格調高く、ここでも深く感動。
第2幕で一気に展開を作り、第3幕では、底知れなく心酔していくという
この辺のもって行き方は、まさにティーレマンという感じである。
鳩が平和を暗示して、高みに上り詰めていくようなフィナーレ、
ブーレーズの演奏だと速くて、流麗で息もつかせない感じなのだが、
それに比べるとティーレマンは、
やはりかなりためているなという印象はあるけれど、
繊細な響きを注意深く吟味しつつ、この美しさも
今回のティーレマンはやはり違うぞ!という印象である。
後半へ行くにつれ、どんどん充実していったようにも思うのだが、
きっと次に聞けば、最初からもっと違って、
聞き込めばさらに違って、深く感じるものがあると思う。

DG 00289 477 6006

「クリスティアン・ティーレマン」に関する記述はホームページにもございます
http://homepage3.nifty.com/tsukimura/

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