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2011年1月12日 (水)

落語につぶやき 72~柳田格之進

先日の黒門亭で常連さんたちとお喋りしていて
どうも納得のいかない(信じられない)ところが、
柳田格之進の娘でおきぬさんが、
憎むべき存在である万屋の番頭で徳兵衛と
後に夫婦になって幸せになるという展開、
これはないだろう…という意見。
一方でそういったハッピーエンドに終わってくれないと
とても正常な気持ちで帰れない…という意見。
全くその通りの重い噺である。内容が深い。
万屋での五十両紛失で疑いをかけられた柳田格之進だが、
おきぬさんは父のためにと自分は吉原に身を沈めて
五十両という金を用意する。もちろん盗んだということではない。
しかし柳田は、奉行の調べを受けるのは、主君に申し訳が立たず、
柳田の家名にも傷がつくと武士の面目から金を徳兵衛に渡す。
徳兵衛が柳田を疑うのは、幼いころより長年にわたって
一心に店のため身を捧げてきた自分であるのに
主人の万屋源兵衛はというと、昨日今日知りあったにすぎない
浪人者の柳田格之進をかばったことの嫉妬からなのである。
ここでの徳兵衛の描かれ方で…何とも皮肉屋であり、
了見の狭い…嫌味な存在である…というのは
柳田格之進の敵ともいう役柄であるからそうなるのだが、だからこそ、
最後におきぬさんと徳兵衛が夫婦になるというのは不快だ!
ということで…私はちょっと考えたのだが、徳兵衛というキャラを
軽く調子のよい…チャラチャラした感じには描かずに
とにかく堅物で真面目ゆえに遊びのない一途な男が
店のために脇目もふらずに金を探して、柳田を追いつめてしまった
という感じにしたらどうなのだろう…という。
すると柳田格之進と番頭徳兵衛の対立関係が成立せずに
噺として面白みに欠けるのかもしれないが、
しかし「柳田格之進」という噺は重厚な人情噺であり、
笑いは必要ないのである。堅物と堅物のぶつかり合いの噺。
というのはいかがであろうか?私の勝手な発想で失礼しました。

あともうひとつ…落語ファンの間で不可解なこととして
納得のいかない内容であるのが、その後、帰参の叶った柳田が、
金に困らない身分に出世したにもかかわらず、
おきぬさんを身請けしなかった…という、これはなぜ?
何よりも先に娘を請け出して、手元に戻さずにはいられないはずである。
ここが…本当の理由はわからないし、武士道というものも
現代人には到底理解のできない領域であるのだが、
一旦親子の縁を切って、吉原に身を売った娘なのであり、
他人となったものを身分のある柳田が身請けすることはできない。
とにかく理解不能な事柄ではあるが、そこが堅物の柳田格之進である。
ここだけは本来の設定をいじってはいけないのではないか…
というのを私は思うのだが、いかがなものであろう?
理解に苦しむような「武士道」というものがかつて存在したのであり、
すべてをぐっと堪え、どんな苦難をも受け入れる…
自らが犠牲となって人を立てる…というのが
「柳田の堪忍袋」という一席なのである。
というのは私の考えで…この噺は人それぞれの受け入れ方があるだろう。
様々な問いかけをしてくる…これが落語の深さである。

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コメント

この件についてはハッピーエンド派です(笑)。

今の演者ではさん喬師匠が一番好きなのですが、娘のおきぬは藩からの支度金で身請けしています。徳兵衛=「主人思い」&「主人思いのあまり主人を柳田に取られたように思い嫉妬してしまった根は誠実な男」という演出をしており結婚に派生させています。それでもさん喬師匠クラスの噺家が演じないと強引な展開になってしまうことは否定できませんが・・・・・
この演目は個人的に中村仲蔵と並ぶ好きな演目なんで拘っているんですよ。

投稿: 鳩が大好きなB.Blue | 2011年1月13日 (木) 20:36

いつもお世話になっております。
たしか…さん喬師匠は、やつれて瞳に輝きを失ったおきぬさんを
徳兵衛が必死で看病して、その後に夫婦になるという展開でしたかね?
小袁治師匠が教えてくださいましたが、
「志ん朝型」ではなく「十代目馬生型」ですよね。
そこにさん喬師匠ならではの視点が加わっていたように思います。

投稿: たけお | 2011年1月13日 (木) 21:45

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