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2013年3月10日 (日)

柳家小満ん「在庫棚卸し」

今日は小満ん師匠の「在庫棚卸し」第3回で
途中、寄り道はせずに真っ直ぐに四谷三丁目の会場へ。
東横線で渋谷へ出たのだが、来週からの地下鉄乗り入れで
現在の渋谷駅は…今日が最後の日曜日であったらしい。
鉄ちゃんだけでなく、たくさんの人が記念写真を撮っていた。
私は出るのが遅くなってしまったので…とてもその余裕はなく、
目もくれずに銀座線改札へ…赤坂見附で丸ノ内線に乗り換え…
今月もまた定例の会で…新宿区荒木町の橘家へ。

柳家小満ん「在庫棚卸し」第3回
柳家小満ん:石返し
柳家小満ん:磯の鮑
柳家小満ん:宿屋の富

今日の三席には、テーマがあるのだろうか?
「石返し」と「磯の鮑」は与太郎が登場で…しかし「宿屋の富」は違う。
「石返し」はそばを売り、「磯の鮑」は様子を売り、「宿屋の富」は富くじを売る…
「様子を売る」というのは、粋な着物姿を見せて歩くこと。物を売って歩くわけではなく、
吉原の仲之町をいい姿で歩いて、張見世の花魁の目に留まるように…ということである。
一席目ははじめて聞く噺。与太郎がお父っつぁんの商売で夜鷹そば屋を手伝っているが、
今日は疝気が出たからと与太郎にひとりで商売に行って来いと…売り声の練習から。
夜鷹そばなどという商売は、表通りではなく…裏の静かな場所で商うものだと
それで与太郎は番町の方へ…さるお屋敷…というのは番町の鍋屋敷と囁かれる…
騙されて、売り物をみんな取り上げられてしまうという…案の定、まんまと騙されて、
用意していた50人分のそばと汁をすっかりとられ、勘定をもらえずに帰ってきた。
それで怒ったお父っつぁんはお汁粉屋に扮して、意趣返し(仕返し)に行くという…
鍋の代わりに大きな石を結わきつけて、それで「石返し」ができた…ここではじめて、
そういえば「石返し」という演目があったはず。どこかで見たことがあるような?
仲入りに「石返し」で検索してみると…やはりその噺であった。これまた珍しい!
今回は最初からいきなり聞いたことのない噺である。在庫が棚卸された!
でも与太郎の活躍だし、楽しくて、印象としては軽やかな感じ。これはいい噺だ。
続いて二席目は…「花魁」の説明になり…花の魁というと梅のこと…となると
これは「磯の鮑」である。数年前に横浜の小満んの会でも演じられた。大好きな噺!
本当に面白い。与太郎は「女郎買いの師匠」こと半可通の梅村久兵衛さんのところへ
吉原のしきたりやもてるための口説をいろいろと教わるのだけど…オウム返しは大失敗。
この噺ですごくいいと思うところが、浅草の雷門が慶応元年の火事で焼けてそれっきり…
現在の雷門は昭和になって再建されたものであり、ちなみに寄贈は松下幸之助だが、
まだ吉原があった当時の…この噺は明治か大正の頃の設定だと思うのだが、
そのときには雷門はなかったということで…時代背景が噺から伝わってくるのである。
吉原に出掛ける時間が午後9時あたりということで…その辺でも江戸ではないのだが…
浅草から吉原へのかつてのにぎわいが目に浮かぶのもこの噺の魅力といえるであろう。
仲入り後は…かつての馬喰町は宿屋が並んでいた…となり、すると「宿屋の富」かな?
とはすぐに思ったのだが、ここが小満ん師匠ならではの深い教養のマクラが展開され…
たいへんに興味深く、思わず「宿屋の富」じゃなくて…もっととんでもなくすごい噺?
なんて…つい思ってしまったのだが、噺に入ると一文無しの客の大法螺がはじまって、
やはり「宿屋の富」であった。でもなかなか普段聞き慣れているのとかなり違っていて、
そこは小満ん流な部分でもあるのだろうし、新鮮な印象で夢中になって聞いてしまった。
ひとつわかりやすいところでは、一文無しの客が田舎の出で…かなりの訛りがある。
江戸へ金の算段をしに出てきたのであり、仕方なく富くじを買わされた一分の金も
故郷の者たちが江戸の土産を買ってきてほしいと…集めて持たせてくれた金だった。
つまりはあまり悪党な印象ではなく、宿屋の親父も素直に騙されるいい人なのだから
今回の「宿屋の富」では、登場人物のキャラ設定に毒の要素は存在しないのである。
そうした部分がすごくよかったな…という印象が強く残り、素晴らしく…そして感動!
富くじが当たって、一文無しが激しく動揺する場面も…ここはたいへんリアル!
小満ん師匠は、普段あまり…細かい所作を芝居がかって演じる方ではないのだが、
この椙森神社の場面は、芝居の一幕のようだったので…この噺を伝えた師匠の…
どこか影響がいまも表れているのかもしれないと…食い入るように見入ってしまった!
宿屋の主がおかみさんに言い付けられて、客のところに手付金をもらいに行く…
それで売れ残りの富くじは、富の当日なのであり、付止まで時間がない…
このまま売れないと…しょいこんでしまう富札なのであり、客も買わされて、
「万が一、当たることもあんべえが…」とそのまま椙森神社へ出掛けるのであって、
この辺の展開も…どうやら型の違った独特な仕上がりで、何ともよかった!
ということで…次回は4月6日(土)だそうである。もちろん予約は済んでいる。

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