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2013年8月 3日 (土)

柳家小満ん「在庫棚卸し」

今日は小満ん師匠の「在庫棚卸し」第8回で
四谷三丁目からすっかりお馴染みの荒木町は橘家へ。
暑いのは暑いのだけど…でも比較的涼しくて、助かった!
夏の噺をたっぷり…早速、今日の三席を振り返ってみたい。

柳家小満ん「在庫棚卸し」第8回
柳家小満ん:千両みかん
柳家小満ん:応挙の幽霊
柳家小満ん:三十石

今回の三席にまつわるキーワードは、「お前さん、いくつだい?」
ではないかと?違っていたら、失礼しました…なのだが、
「千両みかん」で夏の盛りにみかんを買いに行くといいだした番頭さんに
店の旦那が「お前さん、いくつだい?」と歳を聞く。三十九歳の番頭さん。
おまけに八百屋で「みかんありますか?」とたずねると「いくつだい?」
「ひとつでいいんです」「お前さんの歳を聞いているんだよ」って、
暑い盛りにみかんがあるわけがない。「瓜なら冷えてる」という感じで。
続いて…「応挙の幽霊」で、幽霊画を九十円で売るという道具屋さんに
ここでも「お前さん、いくつだい?」…というのは、落款はないけれど、
この画は応挙(円山応挙)の作で何万円という価値のあるものだと…
道具屋が、目がきかなくてどうするんだい!と客に説教されてしまう。
すると「三十石」で…やっぱり歳を聞く場面があるのだ!
船に乗ってきた耳の遠いばあさんに「おばあさん、歳はいくつだい?」
すると「はちじゅう…くっ」って、ついでに娘の歳を聞いてみたならば、
やっぱり「はちじゅう…くっ」って、「同い歳だ!」…そんな訳がない!
みかんの元は橘の実で…江戸時代には種有りの紀州みかんが主流だった。
この頃には、種なしは縁起が悪いと嫌がられていたそうで…
明治に入り、薩長の時代となって、薩摩から温州みかんが入ってきた。
現在は全国どこでも温州みかんである。紀州みかんは天然記念物。
このマクラは「千両みかん」だ。数年前の日本橋での録音を持っていて、
夏というと小満ん師匠の「千両みかん」をよく聞いている!これぞ暑い夏だ!
「みかん」と聞いて、夏を思い浮かべるのは、落語ファンぐらいであろう。
「千両みかん」という噺があるから…落語では「みかん」といえば夏の季語!
小満ん師匠の「千両みかん」で大好きなところがあって、みかんが十房、
千両のみかんに十房あったので…ひと房が百両ということになる。
若旦那が七房食べて、残った三房を「ひとつはお父つぁんに…」
「もうひとつはおっかさんに…」あとひとつ…苦労して見つけてきた番頭さん、
最後のひとつにありつけるのか!と思ったところで「おばあさんにあげておくれ」。
なんとついていない番頭さんだ…この後、あまりの暑さでおかしくなってしまう。笑。
続いて二席目だが、道具屋さんの話題で…単純に「道具屋」かな?
いや、「へっつい幽霊」かも。夏だし「へっつい幽霊」で間違いない!と思ったら…
「珍しい(あるわけのない)手紙」のマクラで…この展開は「火焔太鼓」だ。
そうに違いない!という結論で…そうしたら!なんと「応挙の幽霊」だった。
演目は知っていたけれど、はじめて聞いた。これは貴重品!今回の収穫。
でも帰り道にネットで調べて…先代の圓歌師匠や扇橋師匠のあらすじが
見つかるのだが、どうもいろいろ違っており、小満ん師匠のオリジナル?
幽霊画に九十円の値を付けるのは、扇橋師匠と同じようなのだけど、
圓歌師匠は九千円らしい。その辺で時代設定の違いが表れるのであり、
小満ん師匠の方が古いということである。市で…二円で仕入れてきた画が
九十円に十円を足して百円で買ってくれるということになったので、
ぽんと迷わずに(幽霊画は迷ってはいけない)百円札が入ったものだから
道具屋さんはご機嫌で舶来物のスコッチ・ウイスキーを飲みはじめる。
ウイスキーが日本に入ってきて…まだ珍しかったころということで
ペリーの黒船以降で…明治の中頃かな?という印象もあるのだが、
骨董品の掛け軸が九十円なので…もうちょっと後なのだろうか?
飾った幽霊画にもウイスキーをついでやり…するといつの間にか減っていて、
ついには美人の幽霊が画から飛び出してきた。酔っ払っているので
京都にいたからと京都弁を喋りだし、長崎にもいたから英語が堪能!って、
英語で酒を催促!と…これは愉快である。ウイスキーの酔いもあって、
明るく、軽く、大いに盛り上がる。実に楽しい。幽霊だけど、幽霊画なので…
ここで出てきた幽霊は、恨めしの幽霊ではないのだ。こういう噺は大好き!
仲入り後は旅の噺で…京都は伏見の寺田屋へ…「三十石」だ!
夏の夜船で伏見から大坂への淀川下りである。川の上は涼やかだ。
「三十石」はうれしい。小満ん師匠のこの噺は二度目である。とにかく最高!
師匠の噺の中でも…最も好きな噺のひとつ。船宿での賑やかな光景から
船に乗り込み、威勢のいい船頭さんの漕ぎっぷりが絶品…うっとり!
乗り合わせているのは、江戸っ子のふたり連れの他に京都、大坂の商人、
様々なお国言葉が飛び交う。船の上の様子が目に浮かぶようで
夏の夜明けは早いのだが、しだいに東の空が白んできて…
一晩の時間の経過とともに描かれる噺の中の光や色彩が実に見事!
夏は旅の噺がいい!というのもあるけれど、なんて魅力的なことか。
寝ているすきに懐の財布を抜いた泥棒だが、船頭の機転で捕まるという
きちんとオチまで…小満ん師匠と一緒に素敵な船の旅を満喫したところで…
次回の「棚卸し」は9月7日の土曜日だそうである。予約した!

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