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2013年9月 7日 (土)

柳家小満ん「在庫棚卸し」

今日は小満ん師匠の「在庫棚卸し」第9回で
今月もまた四谷三丁目から荒木町の橘家へ。
毎月通っていると季節の移り変わりを感じるが、
9月に入って、少しだけ秋の気配?朝晩は涼しくなり、
秋を迎えたいという頃だけど、残暑は続くのである。

柳家小満ん「在庫棚卸し」第9回
柳家小満ん:品川心中(上)
柳家小満ん:品川心中(下)
柳家小満ん:酢豆腐

今回は「品川心中」と「酢豆腐」で、飛び込むのは品川の夏の海、
そしてこの雲気の時分で豆腐も腐ると…どちらも夏の噺だが、
「品川心中」では、季節ごとの移り替えで…紋日前ということで
夏から秋への季節の移り変わりも噺の中に意識したいのである。
このふたつの噺…もしかしたら「茄子の古漬け」つながり?って、
どちらも糠漬けの樽が出てくるのだが、今回のテーマはやはり!
「うぬぼれ」なのであろう。男はうぬぼれをエネルギーにして、
とんでもない力を発揮する。「品川心中」の貸本屋の金さんであり、
「酢豆腐」の半ちゃんとキザな若旦那である。抜けているけど、大活躍。
まずは小満ん師匠による品川宿の紹介から…これがうれしい!
JRの線路を越える八ツ山橋を渡った辺りからが品川宿とされているが、
その半ばで目黒川に架かる品川橋の北と南で…北の方が本宿。
つまり格も上であったそうである。その北品川でも品川新宿にあった…
桟橋付きの大店で白木屋が噺の舞台である。品川宿は歩いたので、
噺の中に知っている場所が出てくるというのは、しっかりと実感があって、
その情景に飛び込んでいけるような…でも残念ながら現在の品川に海はない。
噺に入って、これは…本当は書かない方がいいのだけど、いいじゃないか!
実演を聞いていればこそ…なのであり、そこで起こるハプニングもまた、
これは橘家で聞いていた人だけが共有できることであって、ちょっとだけ。
お染が他の客を廻していて、金さんが部屋で待っていると…退屈で
煙管にヤニが詰まって、紙で通そうと、お染宛ての手紙を見つけてしまう。
というのは、「文違い」の場面に寄り道で、あれっとなったところで
「(新宿じゃなくて)品川だった」とお茶目な師匠。でもその後、
何もなかったように…きれいに「品川心中」の続きに戻ったところなんて、
なんて素敵な師匠なのだろうと…アクシデントを輝きの瞬間に変えてしまう…
凄いな!って、しびれてしまう瞬間であった。小満ん師匠が大好きなもので
どんなことが起きても…そこに魅力を探してしまう…ファンなのでお許しを!
後半の心中の場面で、金蔵はお染に海へ突き落とされ、苦し紛れに踏ん張ると…
そこは遠浅の海であり、上では若い衆が飛び込もうとするお染を止めて、
話のやり取りで事情をすべて知ってしまった。それを聞きながら、金蔵は
必ず仕返ししてやると心に誓うのである。ここはいつもの「品川心中」と
少し違っている気がして、仕返しへの執念を強調しているところに
(下)につながる演出であったのではないかと思うのである。とその後、
化け物姿になった金蔵が、親分のところに戻ってきて、大騒ぎになるのだけど
ここまでが「品川心中」の(上)であり、ちょっと一息おいて、二席目は…
続きの仕返しとなる(下)であった。うれしい!録音で聞いたことはあるけれど、
実演でははじめてだし、これだけしっかりとした(下)の口演は貴重な機会である。
明るく陽気な(上)に対して、(下)は陰気で…仕返しが陰湿な内容とか、
「品川心中」で(下)が演じられることはめったにないとよくいわれるけれど、
今日、聞いてみた感想では、(下)もいいではないか!って、魅力的だった。
笑うところもたくさんあるし、お染を懲らしめてやろう!と一芝居である。
陰惨な復讐!という感じではない。ひとりも死なないし、最後は陽気に
金さんは浮かばれた!って、踊りながらに登場する。楽しい展開だ。
でもこれは、平成の現在だからこそ!なのかも。というのは、お染にとっては、
女の命ともいわれる髪を切らされた…もう商売にも出られないということで、
その仕返しの内容、お染の心情というのは、江戸から明治の昔には、
実は非常に深刻なものか?それは、とても笑えない内容であったのかも。
もしかしたら…以前はとても演じにくい…洒落にならない内容であったのかも。
いま聞く分には、全く問題ないし、これならもっと聞きたいな!って、思ったのだ。
「品川心中」の(下)を聞けたのは、今回の最大の収穫だけれども、しかしながら…
オチで「あまりあこぎな商売をするから…びくにされたんだ」というのはわからない。
このオチについては、正確なところは聞き逃したというか、あやふやな記憶で…
「びくに」というのは「比丘尼」であろうか。意味を調べてみたところ、
「尼僧」というのと「江戸時代の尼の姿をした下級の売春婦」というのがある。
こういう解説も見つけた。あこぎな商売で客を釣るから比丘にされたんだ。
客を「釣る」というのは「騙す」ということ。「比丘」というのは、魚を入れる籠。
釣りで使うビクのことだ。それと上記の「比丘尼」を掛けているのかも。
恐らくそういうことだろう。これは難しい。聞いたときはさっぱりわからなかった。
仲入り後、三席目は夏の終わりに「酢豆腐」である。小満ん師匠のこの噺で…
大好きなところがあって、キザな若旦那が「さすがはすんつぁん(しんちゃん)」。
この若旦那は、本当に強烈なキャラである。それを演じている師匠が楽しそう。
聞いているこちらも楽しくて、うれしくなってしまった。腐って黄色くなった豆腐を…
扇子で臭いを飛ばしながら、口に流し込む場面、会場の我々も…思わず、
顔をしかめてしまう…恐怖の情景なのだけど、今日、一番の盛り上がりか!
よかったな!という…心地よい満足感…幸せの土曜日を過ごせたところで
次回の「棚卸し」は10月6日の日曜日だそうである。予約した!

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