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2013年12月 7日 (土)

柳家小満ん「在庫棚卸し」

12月の「在庫棚卸し」で…今年の最終回だ。
まだ他の会もあるけれど、私にとっては、
この四谷で年内は師匠の聞き納めである。
小満んの会と月例の「棚卸し」で…たくさん聞けた。
かつてない充実の一年である。この満足感…幸せだ。
「棚卸し」は来年も続くので、楽しみは尽きない。

柳家小満ん「在庫棚卸し」第12回
柳家小満ん:ふたなり
柳家小満ん:薪割り屋
柳家小満ん:芝浜異聞


12月らしい噺が並んでいる。「薪割り屋」は忠臣蔵の三村次郎左衛門。
討ち入りの直前までが語られるが、その前の一週間で刀を研ぐという…
つまり名人の竹屋喜平次さんは、そろそろ研ぎはじめる頃?いや…
今日は12月7日なので…薪割り次郎兵衛から刀を預かる頃か?
そして酒を断って、刀研ぎに集中する…まさに今の噺ということである。
年末恒例!お馴染みの「芝浜」だけど…今回は「芝浜異聞」であり、
これは長谷川伸の作で「野次馬」を下地に師匠が創られた噺だそうである。
話を一席目に戻して、これは聞いたことのない噺。内容でも演目が浮かばず…
仲入りにスマホで調べてみたら…「ふたなり」だ。だとすると聞いたことがある。
志ん生師匠の録音が残されている。たしかに聞いているのだけど、記憶なし。
面白いし、味わいの一席で、志ん生師匠の録音を改めて聞いてみたいと…
俄然興味もわいてきたのだが、地方の漁師たちが登場のこの設定は珍しい。
何でも呑み込む(頼みを聞く)鰐鮫の亀右衛門さんが、若い漁師ふたりの
借金の五両を都合してやろうと…自分もまたおかんこ婆さんのところへ
金の工面に出掛けるのだが、その途中で死のうとしている娘に出会い、
死に方がわからないと首くくりの方法を教えて、なんと自分が死んでしまう。
松の木に首をくくった亀右衛門さんが見つかり、懐に娘の手紙があったものだから
女が両親に宛てた手紙と木にぶら下がった老人の死体とで、検視の役人が困って、
「この者は男子か女子か?」「漁師(両子)でございます」というオチ。なるほど。
志ん生師匠の録音があるぐらいなので…演目は知っていたのだけど、
この噺もこれまで全く聞いたことがなかったし、なかなかの珍品か!貴重である。
二席目は忠臣蔵で「薪割り屋」…この噺は2010年11月の小満んの会で聞いている。
そのときの記録を振り返ってみたのだけど、講釈の義士銘々伝から「三村の薪割り」を
三代目の圓遊が「滑稽義士」という演目で落語に仕上げたと…これはそのときのお話。
実は四十七士のひとりだが、薪割り屋の次郎兵衛と刀研ぎの名人で竹屋喜平次という…
この二人は馬が合うのか…酒を飲んだらグズグズで、しかしそのやり取りは味わい!
後半に名刀「井上真改」の登場をきっかけに…二人は生まれ変わったかのような
竹屋喜平次は酒を断って、一世一代の研ぎ仕事をして、名刀を仕上げるのであり、
それを立派な侍姿の三村次郎左衛門が試し斬りをして、「これも固木(仇)討ちである」と。
元の講釈を聞いたことはないのだが、人物描写は楽しくて、落語ならでは…という感じだし、
一方で話題は討ち入りへと向かって…赤穂義士が描かれての引き締まった印象は、
やはり講釈ネタならではということかも。ちょうど来週が討ち入りである。今でしょう!
仲入り後の三席目は…芝の風景、芝の魚河岸(雑魚場)の話題で…これは「芝浜」!
とは思ったのだが、「お前さん、起きておくれ」とはならずに…師匠の「芝浜異聞」である。
こちらは2011年11月の小満んの会で聞いている。魚屋の熊さんがとにかく真っ直ぐな人。
拾った財布を一所懸命に落とし主のところへ届けるのであり、その清々しい印象は格別!
気持ちのいい噺である。芝伏見町の豊岡屋治右衛門さんのところに財布を届けたが、
小満んの会で聞いたときには、「振る舞われた酒の味が千両だ!」までだったのだが、
今日はその続きがあり、暮れになって、豊岡屋からは二俵の米が届き、それから毎年、
盆と暮れには米が届くという…拾った財布が縁になり、熊さんの家には幸運が舞い込む。
また前半に登場の熊さんの幼馴染で博打打の平ちゃんだが、信州松本へ行き、
心を改めて、元の家業であった米屋をはじめ、新年には初音売りの施しをしたという…
後日談も語られて、これまた実におめでたく、心暖まる…素晴らしい一席であった。
通常の「芝浜」で…三年たって、拾った金が下げ渡されるというのは、明治以降のこと、
一方の江戸の遺失物の扱いは「三方一両損」などでも知られているけれど、
財布の中の書付(所と名前)を頼りに拾った者が落とし主に届けてやる…という
戻ってくれば、それに対してお礼をする。戻ってこなければ、落とした物は戻らない。
その点で…長谷川伸の作品に「これは芝浜だ!」と思い付いたのが小満ん師匠であり、
ここでの「芝浜異聞」が生まれたのであった。これが江戸時代の芝の情景なのだ。
その辺を考えていくと実に深いものがあるし、また面白さでもあって、この噺は大好きだ。
ということで…次回の「棚卸し」は新年1月5日(日)である。もちろん予約済!

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