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2014年1月20日 (月)

第120回 柳家小満んの会

今日は今年最初の横浜での小満んの会である。
夕方から関内ホールへ。寄り道なしに会場へ直行。
今月は毎週、師匠の会があって、うれしくなってしまう。
三席ずつ聞いて、早くも九席だ。九つの噺である。

金原亭駒松:道具や
柳家小満ん:武助馬
柳家小満ん:孝女お里
柳家小満ん:按摩の炬燵

今年の干支(午年)にちなんで、一席目は「武助馬」。
というのでは…前座さんも駒松さんで、駒に松で、おめでたい!
「武助馬」は久しぶりだ。かなり以前に時蔵師匠で聞いたことがあり、
聞いたのは覚えているのだけど、筋はすっかり忘れてしまって、
でも忘れているぐらいの方が、新鮮に楽しめるので…予習はなし。
はじまると…そうそう、武助さんが芝居の馬で、後ろ足であり、
馬の足を贔屓に鰻と酒の差し入れで、「武助馬!」って声がかかり、
調子に乗って、ひひ~んって、嘶いたのだが、後で親方に叱られ、
「何で後ろ足が鳴くんだ!」と。すると武助は、相方の前足が、
「前足なのにおならしました…」というオチ。後から考えて気付いた。
二席目は大ネタで、圓朝作「操競女学校」から「お里の伝」である。
終わってみると…50分近い長講であった。実に複雑な噺であり、
やはり圓朝の噺は人間関係が緻密で…厄介で…難解で…
でもそれが何ともいえなく面白いのであり、私はこの噺は、
去年の「棚卸し」でも聞いて、二度目でもあって、大いに楽しめた。
12月15日の雪の朝の情景で、吉良邸討入りの一件から
お里の仇討に話がつながっていくところも独特の展開であるし、
正月七草の振る舞いで…酒の勢いで喋ったことから仇敵に巡り会う…
それを発端にして、仇討ち本懐を成し遂げるわけで、その点では、
正月の今の季節にぴったりであると…そんなことにも気付かされた。
お里の奉公先で…女中のお滝婆さんが絶妙の合の手を入れ、
敵の岩淵伝内に父を殺した大罪を自白させる…その場面は、
まさにこの上ない助太刀で、ネチネチと攻め立てていくところなど、
圓朝ならではの人物描写といえるのか…たまらないものがあった。
仇討ちの決闘の場面など、大迫力であったし、夢中になってしまう。
でもここでの登場人物を見ると…全員がお里の味方をしているのであり、
仇敵の岩淵伝内だけが孤立しての悪役なのだけど、悪党キャラとしては、
なかなかの個性的な人物であるようにも…その辺は師匠の描き方で
人間味を持たせるというか、そこに多少の笑いの要素も持ち込まないと…
ただ敵討ちの噺で…暗く陰湿になってしまうと…それを避けたかったのか?
仲入り後は、お馴染みの「按摩の炬燵」だ。実はまだ最初の頃に
小満ん師匠を二度目に聞いたのが、この「按摩の炬燵」であったのだ。
実に懐かしい。でも聞きはじめのその頃に比べ、いまではたくさん聞いて、
やはり吸収する度合いも全く違うのか?今日のその素晴らしかったこと!
本当に最高の「按摩の炬燵」であった。按摩の米市さんの軽さだろうか。
酔いも回って、テンポが加速する…まさに酒が喋らせているというところ。
酒の勢い…「孝女お里」の岩淵伝内とも共通するのだけど、按摩の米市は、
酔うと口が軽くなって、話し出したら止まらない…その滑らかさ。心地よさ。
もしかして…今回の三席の共通項は、「酔うと出す」というところ?
「武助馬」では、酔うとおならを出す。「孝女お里」で…酔って、罪を出す。
そして「按摩の炬燵」…酔って、熱を出す。それは考えすぎか。話を戻して、
小満ん師匠で大好きなのが、「つるつる」で…幇間の一八が酒に酔って、
ひとり暴走していくところ、同じく幇間では、「鰻の幇間」で一人妄想をして、
情勢が変わっては、鰻屋の女中に小言と嫌味が止まらなくなってしまったり、
今回は按摩さんではあるけれど、どこか共通するものを感じるのである。
本当に聞きほれてしまった。私的にはこういう感じの師匠が好き。
前半では、番頭さんが小僧たちに奉公の厳しさをお説教するのであり、
それでも寒すぎます…とかわいそうだからと按摩の炬燵を仕立てて、
しかし番頭さんも店の者たちに範を示すために…自分もまた、
これまで炬燵に暖まったことがないという。寝静まって、夜も深まり…
ひとり炬燵になった米市さんが、しみじみと「いい番頭さんだね」って、
褒めているのだが、そこは聞いているこちらも心暖まる場面で
しかし次の瞬間、小僧のひとりが夢の中で放水をはじめるのであって、
折角の炬燵も大惨事である。この展開が落語の可笑しさというか、
実にいい。でもこの味わいは、ずっと余韻として残っているのであって、
今日の「按摩の炬燵」も輝いていた。噺の中の極寒の夜と同じく、
まさに大寒であり、この数日も寒波の到来で厳しい寒さが続いているが、
そういう時期だからこそ…「按摩の炬燵」がぴったりなのであった。
これが暖冬で…楽な冬であったなら、噺の風情も失われてしまう。
寒いのは嫌だけど、もう少しの間、それを前向きに受け止めることにして、
そんなことで…次回は3月18日(火)第121回 横浜 柳家小満んの会
演目は「松竹梅」「橋場の雪」「胴乱の幸助」の三席。楽しみである!
「梅が萎れて」…春が来ている頃か?暖かくなっているだろうか?

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