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2014年3月13日 (木)

第266回 柳家小満んの会

夕方から小満んの会で日本橋に行ってきた。
激しい雨と風。ずぶ濡れになってしまった。
これでは外を歩きたくない…ということもあり、
東海道線で新橋まで行って、銀座線で三越前へ。
なるべく近い出口から地上へ上がったのだけど、
それでも日本橋亭へのわずかな道のりで濡れてしまう。
しかし終演後には雨も上がって、帰り道は助かった。
親しい方々と神田まで歩いて、東京駅で東海道線に乗り換え、
最短で帰ってきたのだが、横浜に戻った頃には月も星も見えて、
昼間のあの嵐は何だったのだろう。気温も上がり、蒸し暑い。

古今亭半輔:時そば
柳家小満ん:おすわどん
柳家小満ん:神奈川宿
柳家小満ん:派手彦

今日の三席もすごくよかった。大満足である。噺の内容については、
ひと月ほど前に少しだけ予習をしておいて、安心して聞けたのだが、
しかしやはり…はじめて聞くという新鮮さは何よりもの楽しみだ。
今回の三席で…その共通項は「恋女房」というのがあげられると思う。
「おすわどん」では、恋女房が死んでしまって、新しいおかみさんもできた人…
しかしひと騒動がもち上がる。そして「派手彦」もまた、番頭の佐兵衛さんが、
踊りの師匠でお彦さんに一目惚れの恋煩い。そこまで慕ってくれるなら…と
晴れて夫婦になるのだが、佐兵衛さんは恋女房が大切で…大切でならない。
そして「神奈川宿」である。こちらは三人旅の一人が、去年の盆に大山参りで
神奈川宿に滞在しているけれど…馴染みの宿があるか?という話になり、
そこで再会した縁ある女の話になって、旅籠の飯盛で夜を共にするのだが、
結果は大失敗で…夜這いのはずが朝這いになってしまって…という噺である。
一晩なりとも…恋女房と慕った女のところへたどり着けず…という展開。
一席目は「おすわどん」だが、夜な夜な聞こえる「おすわどん…」の声の正体、
それは通りで商売をしている…「おそば、うどん」のそば屋の売り声であり、
実は知っていた。何ともバカバカしい展開だけど、正体がわからないうちは
師匠がその辺をものすごく神妙な表情で…まさに化け物か何かを連想させる…
怪談噺以外ありえないという雰囲気を漂わせ、知っているとそれが可笑しくて…
この時期にそんな怖い怪談噺なはずがない!という…その辺の落差が最高だ。
得体のしれない恐ろしい空気に支配されたかと思うと…とぼけたそば屋が登場で
そば粉がそばの子で…自分の倅、自分の代わりにお手打ちにしてくれ…とか。
恋女房の死、そして新しい女房でおすわさんが祟られているのではないかという
何か追い詰められていくような息苦しさから…この後半の軽さ、バカバカしさ、
そのひっくり返されるのが味わいであり、楽しくって、心地よくって、何ともいい。
落語って、くだらなくって、バカバカしいほど、ツボにはまるものである。
二席目は「神奈川宿」。「三人旅」の(上)である。「三人旅」の前半部分は
まず演じられることはなくて、小満ん師匠も今日がネタ下ろしなのだそうだが、
この「神奈川宿」の場面も極めて珍品であろう。「三人旅」に関しては、
以前に調べたことがあって、伊勢詣りの旅のきっかけを説明する「発端」、
朝這いの「神奈川宿」、この先は有名だが「びっこ馬」と小田原宿の「おしくら」、
今回の「朝這い」に関しても知ってはいた。でもきちんと聞いたのははじめてだし、
かなり忘れてもいたので、その面白かったこと!夢中になってしまったこと!
「三人旅」で「神奈川宿」は決して有名ではないが、これはもったいない。
三人のやり取りに旅籠の若い衆も加わって、演じる難しさもあるのだろうか。
今回の小満ん師匠のでは、品川での見送りの場面にはじまり、旅の風景は、
袖ヶ浦、鮫洲、大森、六郷の渡し…江戸初期の六郷大橋が流された歴史も語られ、
そして川崎宿に入っては、名物の奈良茶飯を食し、初日は神奈川泊まりとなる。
客引きの若い衆が加わったところで、長々と「朝這い」の一件が語られるのだが、
オチに関して、ぴんと来なかったのだけど、改めて落語事典を参照することにして、
夜暗いときに行くから「夜這い」で…朝這って行ってどうする。お前は飯盛女に
お膳を据えられたんだ。もっともその家が「大米屋」といった。師匠は「大飯屋」。
「膳を据える」とは、女の方から言い寄ってくること。飯盛なので…誘いというか。
「据え膳食わぬは男の恥」というやつである。女の方から言い寄ってきたのに
それを断るのは、男の恥だという。掛け言葉としては、文字通りに受け取って、
飯盛女が御膳を用意してくれる…というのと、一方で街道の宿場の旅籠であり、
遊女を意味する「飯盛女」が男を誘ってきた…というのが掛けられているのだが、
その点で…女を置いている宿のことを「飯盛旅籠」といい、「大飯屋」という屋号が、
まさに飯盛旅籠であることを伝えていたのか?そこに面白さがあるのかもしれない。
なかなか現代では、こうした細部については理解が難しいところであるのだが、
江戸の旅風景を知るのには、落語には様々な情報が詰め込まれている。
ちなみにこの後の「おしくら」でも飯盛の話題で大騒ぎになるわけで、こればかり。
仲入り後は「派手彦」である。この噺も…別れの悲しさから石になってしまう…
その辺のことはわかっていたのだが、飛鳥時代に遡り…元になる古い話があって、
大伴狭手彦が朝鮮へ出征し、妻の松浦佐用姫が船を見送って石になってしまった…
歴史的なところと浄瑠璃に残る物語的な部分とを…小満ん師匠はマクラでしっかり
説明してくれたので、なるほど!って、よく理解できたのである。この説明が重要だ。
つまりは朝鮮に旅立つ狭手彦が、木更津への船に乗り込む派手彦なのであり、
石になって見送る松浦佐用姫が、松浦屋の番頭で佐兵衛さんになっているという…
しかしここで、夫の佐兵衛さんが女房と別れる悲しさに耐えかねて…というところが
落語ならではのお笑いということであろう。実はここをもう一度詳しく復習したければ、
圓生百席の圓生師匠の録音を聞けば、述べられていると思うので、私は今回、
あえて百席は聞かないようにしていたのだが…少ししたらそちらも聞いてみたいと思う。
この噺もなかなか聞けず…もう当分の間、機会はないと思うのだが、実に面白かった。
恋煩いで食べ物が喉を通らなくなり…というのは、「幾代餅」「紺屋高尾」とそっくりだが、
店の堅物で女嫌いの番頭さんというところがユニークだ。同じくお医者様が見立てをして、
酒屋ゆえに…お腹の中に徳利があり、栓をしたから通らない…恋煩いの件は知れて、
相手のお彦さんは、出入りの頭の妹分、それで小僧の定吉を使いにやるのだが…
この場面は先日も聞いた「質屋庫」に似ているようでもある。噺そのものは難しくなくて、
ごく親しみのある展開だ。そして賑やかで楽しい。こちらもオチに関して、少しだけ。
女房孝行(こうこ)で石になったので、重石(漬物石)になった…ということである。
そんなところで来週は、火曜日(3月18日)が横浜での柳家小満んの会であり、
演目は「松竹梅」「橋場の雪」「胴乱の幸助」の三席である!待ち遠しい。

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