« マウリツィオ・ポリーニ 4 | トップページ | 試作品で小ゑん・喜多八 »

2014年3月 9日 (日)

柳家小満ん「在庫棚卸し」

今月もお馴染みの荒木町へ。小満ん師匠の棚卸しである。
3月も中旬へ進もうとしているが、まだまだ寒く…冬は続き、
噺の方の花見シーズンは、もう少し先のようである。
梅は咲いたか、桜はまだかいな…で、いまは梅なので
今日は「鶯宿梅」と「質屋庫」で梅の出てくる噺だ。

柳家小満ん「在庫棚卸し」第15回
柳家小満ん:締め込み
柳家小満ん:締め込み 後日譚
柳家小満ん:鶯宿梅
柳家小満ん:質屋庫

「鶯宿梅」と「質屋庫」は梅の噺なのだが、「締め込み」に関して、
関係ないのかもしれないけれど…三席とも勘違いの噺である。
今回のテーマとまではいかないかもしれないが、三席の共通項で
泥棒さんが荷造りした風呂敷包みを見つけて、帰ってきた亭主は
女房が間男していると早とちり。馴れ初めにまで遡る大喧嘩。
泥棒の噺では定番の「締め込み」にはじまり、珍しい後日譚も…
「鶯宿梅」では、普段から養子であることを気にしている若旦那が、
端唄の「春雨」で「鶯宿梅じゃないかいな」を「養子くさいじゃないかいな」と
聞き違えてしまう。堅物で真面目な人ほど、思い込みが激しいという。
「質屋庫」では、これは本題ではなく…その辺で違うかなとは思うけど、
両腕に龍の彫り物で、背中も倶利伽羅紋々という出入りの熊五郎が、
強そうに見えて、実は少しも強くなかったという…見当はずれの勘違い。
その熊五郎がやはり勝手に勘違いをして、酒の一件、たくあんの一件、
下駄の一件とこれまでの悪事が露呈する。さらに早合点は続き、
三番蔵の話になって、雨が漏るとか…泥棒が入るとか…勘違いばかり、
そそっかしい男である。「質屋庫」はこの辺で笑わせる噺ではあるのだが。
いつもの三席…というか、今回は四席ともいえるけれど、順番に振り返り、
「締め込み」のような…普段ごくお馴染みの噺を小満ん師匠で聞けると
また格別な味わいがあって、新鮮でもあり、改めてその噺を見直すという、
今回の「締め込み」もそういった印象であったのだが、夫婦喧嘩が激しい!
これまで出会ったことのないような強烈な応酬が炸裂する夫婦喧嘩であった。
後で仲裁に入った泥棒さんが、あなた方は仲がよすぎる…といっているけれど
こちらも相手のことを想って、思い込みが激しいから、喧嘩がはじまるのであり、
その辺を見事に付いている。この辺の演出で聞き慣れた噺もガラッと変わる。
そして可笑しかったのが、仲裁に入るという点では、夫婦の機嫌を取って、
泥棒は逃げ出したい一心で、いろいろと持ち上げるのだが、まるで幇間である。
落語に出てくる泥棒は、いつも間抜けな泥棒ばかりといわれているけれど、
お調子者で、この剽軽な性格は、罪がないというか、つい許してしまうという。
泥棒に酒を勧めるここでの亭主もまた、間抜けなのであり、長閑な風景である。
続いて二席目なのだが、泥棒の話題はもう暫く続き、小噺もいくつか…
すると…あれ?これは先ほどの「締め込み」の夫婦のところではないかって、
留守の間にまたも空き巣に入られて、今度も風呂敷包みの荷物が置いてある。
最初の仲裁泥棒は、すっかり改心して、いまは堅気になって…日雇い人足で
汗を流している。今度入った泥棒が、先の泥棒の弟分であり…一緒に謝って、
今回も許してもらうのだが、この噺は、初代の林家正楽の作であり、
「締め込み 後日譚」だそうである。もちろんのこと、はじめて聞いた。
初代正楽の作品で有名なのは、三木助師匠で知られる「さんま火事」など。
「締め込み」に(下)があったのか…といっていいのかわからないが、
この「後日譚」も罪を許してやる…という、何ともお粗末な間抜け泥なので、
その辺で、聞いていてもつい心を許してしまう…落語ならではの展開である。
まさに演り手のない噺だが、この噺も失われてしまってはもったいない。
続いて珍品をもう一席…「鶯宿梅」。実は一月に師匠にお会いしたときに
これまで聞かせていただいた珍しい噺の中で「鶯宿梅」が大好き…
という話をしたら、京都へ鶯宿梅の実物を見に行った話をしてくださり、
その際のことを話題にした記事も後で送ってくださって、お手紙には…
今度の棚卸しで演ってみたいと思います…とのこと。ここで実現したのだ。
2010年3月の日本橋での小満んの会で「鶯宿梅」は演じられており、
そのとき一度だけ…とのことだったので、四年ぶりの久しぶりである。
師匠ともお話ししたのだけど、端唄の文句というのが、馴染みがなくて、
その辺で取っ付きにくい…それでこの噺も失われてしまっては惜しい、
というのも…養子の若旦那が自分の身の上を気にしているあまり、
少々被害妄想のように端唄を聞き違えてしまうという…この展開は、
実によく理解できる情景であるし、親しみのある人物像といえる。
この若旦那も少々そそっかしいところがあって、かわいらしいのだ。
私は「鶯宿梅」が大好きなのだけど、何とかこの噺を残したい!という
誠実で真面目なのだけど、ちょっと抜けたところもある若旦那…
愛嬌のある親しみの存在なので、そんな若旦那を演じてほしいと…
ぜひ若手の噺家さんには、小満ん師匠に習いに行ってほしい!
仲入り後は、二月の初午で手習いに通いはじめる子供たちの話題から
手習いといえば、天神様で菅原道真公…するともうひとつの梅の噺は、
お馴染みの「質屋庫」である。小満ん師匠の日本橋での「質屋庫」を
録音で持っているので…こちらも大好きでよく聞いているのだが、
実演では今回がはじめてだ。「質屋庫」って、実にいい。楽しい噺である。
小僧の定吉が芋羊羹に取りつかれたり、熊五郎の大暴走があったりと
可笑しい場面は多々あるのだが、この噺も…落ち着いて、冷静な旦那と
しっかり者だけど臆病な番頭さん、そしてひどくそそっかしい熊五郎、
登場人物それぞれに…ハッキリとしたキャラ像が存在していて、
その辺がくっきりと浮かび上がってくると実に豊かな描写であって、
いい噺だな…って、思うのである。サゲで菅原道真公も登場するという
質に入れられるような掛け軸なので、あまりお宝ではないのか?
少々軽い…貫録のない道真公がまた可笑しくて、今度もまた流される。
質に入れたのが藤原方で…流すのはやはり藤原(時平)…邪険な扱い。
ということで…次回の「棚卸し」は4月6日(日)である。もちろん予約済!

|

« マウリツィオ・ポリーニ 4 | トップページ | 試作品で小ゑん・喜多八 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/121598/59269813

この記事へのトラックバック一覧です: 柳家小満ん「在庫棚卸し」:

« マウリツィオ・ポリーニ 4 | トップページ | 試作品で小ゑん・喜多八 »