« 4月18日の感想~森下由来 | トップページ | 落語につぶやき 236~人情八百屋 »

2014年4月19日 (土)

黒門亭で左橋・扇生・小燕枝

実は久しぶりの黒門亭。先月は行かなかったので。
今日は大好きな小燕枝師匠なので、逃さずに来た。
噺も珍しい「人情八百屋」をネタ出しなので…注目!

第2部
柳亭こみち:悋気の独楽
初音家左橋:火焔太鼓
桂扇生:野ざらし
柳亭小燕枝:人情八百屋

4月から第2部の出演が4人となり、変わったなとは思っていたのだが、
前座さんの高座は第1部のみとなって、第2部は二ツ目のこみちさんから。
何となく…やはり前座さんの一席は、前に欲しいな…という印象だったが、
まあ、すぐに慣れるだろう。今日の高座返しは三遊亭しあわせさん。
こみちさんは自身の体験も踏まえて、嫉妬のマクラから「悋気の独楽」。
かわいいながら小生意気な定吉が絶品。一方のお妾さんに関しては、
女性の噺家ならではで、その色っぽさがリアルなところはいいところ。
逆に噺の中でそこが際立って聞こえてきてしまうところはデメリットか。
このところ毎日来ている旦那が、今日も来たと女中から聞いて、思わず、
「今日も来たのかい?」って、実は嫌々、不快な表情、ここは欲しかった。
旦那に対しても「このところ毎日で、お宅の方は大丈夫なんですか?」って、
少々嫌味な台詞を入れるのも…裏表のあるお妾さんなのであって、
その辺の描写でより面白くなるのだが、今日のお妾さんは裏のない性格。
続いて、左橋師匠が「火焔太鼓」。古今亭のスタンダードな「火焔太鼓」では。
心地のよいテンポ感で…あまり心地よすぎると記憶が遠のいてしまって…
仲入り後、続いて扇生師匠の「野ざらし」だが、明るい芸風と華やかさが、
「野ざらし」の賑やかなところにぴったりで、歯切れのよさはお見事であった。
でも…向島に着いて、先に来ている釣り人が、威勢のいい江戸っ子であり、
ここは風流人の多少ご隠居ぐらいの穏やかさの方が、八つぁんとの対比で
そのちぐはぐなやりとりが際立ってくると思うのだけど、それは私の感想。
水をかき回して、顎を釣って、針を外して、歌う…前半の盛り上がるところまで。
トリは小燕枝師匠の「人情八百屋」。ここまで感動したのは、実に久しぶり!
演目が発表になったときに…知らない噺ではあったので、調べてみたのだが、
「唐茄子屋政談」に似ていて、誓願寺店のおかみさんが助けられるそちらと
こちらの「人情八百屋」では、霊岸島の元浜町を舞台にして、やはり長屋だが、
病の亭主とおかみさんは死んでしまうのである。その後の展開が噺の中心で、
類似の設定については不明だが、元は浪曲、さらに元は講談との記述もある。
「唐茄子屋政談」もそうだけど、なぜ子供を残して、ふたりは死んでしまうのか?
江戸の頃には、わが子のことよりもそれ以上に…恩人への感謝の気持ちが重く、
それが踏みにじられたときの申し訳なさで、命を絶って、詫びるのだ。その辺が
まずは現代人には理解不能。ご恩は大切だとしても、子供を置き去りにして、
どうして自分だけが死ねるのか?残していく子供たちへの想いはないのか?
その疑問に関しては、これは私の勝手な考えだけど、当時は流行り病や
火事で燃えれば、江戸は跡形もなく、命は、実にはかないものであった。
親が死んで、子供が残されても、その子は長屋の者たちがきちんと育てる…
そして歳になれば、奉公先を見つけて、ひとりで生きていかれるだけの
道を付けてやるというか、ここでも実際に、長屋の火消し夫婦が面倒を見て、
心の優しい八百屋の夫婦に引き取られていくのだ。そういえば、書いていて
いま思い出したのだけど、流行り病で親が死に、育ての親への恩を果たす…
というのでは、全くその状況が噺の「肝潰し」でも描かれているではないか。
つまりはあったのだろう。親が死に、引き取られ、育ての親への恩が生まれる。
ここでの夫婦が、残していく子供たちに何の心配もなかった…とはいわないが、
それ以上に窮地を助けてくれた八百屋さんへの恩が重かった…というのは、
江戸ならではのこと、昔の人々の心を理解してあげないといけないのだろう。
でも実際、それは、現代人には不可能か。あまりにも考え方が違い過ぎる。
その点では、あくまでも噺なのであり、それも遠い、遠い昔話なのである。
しかし小燕枝師匠は素敵だった。丁寧でおっとり、姿勢の低い八百屋さんと
逆に荒っぽく、これぞ江戸っ子という火消しの鉄五郎。その対比の鮮やかさ。
オチは、八百屋の平助さんに引き取られていく子供たちを見送って、
鉄五郎はしみじみと…八百屋さんに育ててもらった方が子供たちのためだ…
だって俺の商売は火消し。躾け(火付け)はできねえ。この一席は宝物!

|

« 4月18日の感想~森下由来 | トップページ | 落語につぶやき 236~人情八百屋 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/121598/59499864

この記事へのトラックバック一覧です: 黒門亭で左橋・扇生・小燕枝:

« 4月18日の感想~森下由来 | トップページ | 落語につぶやき 236~人情八百屋 »