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2014年5月13日 (火)

第267回 柳家小満んの会

夕方から小満んの会で日本橋に行ってきた。
電車の乗り継ぎも順調で…思ったよりも早く着いたので、
工事中の福徳神社を見に行ってきた。近所の浮世小路。

三遊亭わん丈:不精床
柳家小満ん:馬の田楽
柳家小満ん:三方一両損
柳家小満ん:大名房五郎

まずは「馬の田楽」から。小満ん師匠の田舎の噺って、好きである。
田舎者が出てくる噺というか、訛りが強い「権兵衛狸」や「長者番付」、
権助(ご飯炊きの清蔵)が出てくる「木乃伊取り」など、絶品である。
その点では、この「馬の田楽」は全編、長閑な田舎の風景で
のんびりとした空気が漂っているのだが、馬子さんの太十が、
ひとり大慌てなのは、面白くて仕方がない。呆れるほどの穏やかさに
イライラしている太十が、噺のスパイスになっているような印象である。
それもそのはず、馬と商売物の味噌樽二丁がなくなってしまったのだから
考えてみると…それはそれは大変なことで、真剣に困った話である。
でも馬の行き先を尋ねて、耳の遠いお婆さんや頓珍漢なことを喋る男、
吃っている男、酔っ払いの寅十とみんなちっとも頼りにならずに…
登場人物の全員が抜けている…というのが、何とも味わいというか、
独特の時間の流れが心地よい。改めて聞くとこういう噺って貴重かも。
二席目は「三方一両損」で、日本橋の会では、五年ぶりになるかと思う。
師匠の「三方一両損」は大好きである。この噺は私のお気に入りのようで
他の噺家さんで聞いても喜んでいるのだが、小満ん師匠のは、また格別!
神田小柳町の大工で吉五郎と神田白壁町の左官で金太郎という…
ふたりの喧嘩っ早い江戸っ子に大家さんがサポーターについて、
大家さんがまた喧嘩好きという…困ったもので、江戸っ子というのは、
喧嘩は江戸の華だと、あれば祭りのようだし、その当人はまるでスター!
吉五郎と金太郎の啖呵の応酬が実にいいけれど、巻き舌の具合とか、
抑揚や勢い、細かいところで江戸っ子の雰囲気を深く追求されているのだと
師匠の「三方一両損」は、実に引き込まれてしまう。お白洲の場面も
かなり映像的な効果が強い噺なのか…時代劇のイメージもあるけれど、
落語の中でも最も乱暴な噺だが、こんなにも江戸を感じる噺はないと思う。
江戸っ子のサッパリとした性格ということだが…喧嘩の当人同士が、
喧嘩をしながら…馬が合うというか、仲直りも早いのが、後味のよさ。
三席目は宇野信夫作「大名房五郎」だ。圓生師匠で有名な噺だと思うのだが、
圓生百席にもあるのだけれど、いわゆる誰でも演る古典落語ではないのかと、
これまで聞いてこなかった。あらすじは知っていたのだが、聞くのははじめて。
それが面白かったのだ。後半のスリリングな展開、どうなるのだろう…って、
その辺は、小満ん師匠でいうと尾崎紅葉作「茶碗割」にも似ている気がする。
質両替商の大金持ちで万屋万右衛門という人が、この上ないケチな男で
施しと塩辛が大嫌いだと…絵に描いたような憎まれ役だが、おかみさんが、
さらに強欲そうで、金に執着しているという…本当に笑えるキャラである。
好きにはならないが、噺の上では盛り上げて、楽しませる場面であった。
大工で房五郎という人も稼いだ金はみんな困った人のために使ってしまい、
その辺の慈善家のイメージだと…まじめすぎる点を考えてしまうのだが、
そこはちょっと違って…機転も利くし、融通も利くし、仕組んだ策は大胆で
この「大名房五郎」の登場人物というのは、なんて魅力的なのだろう。
岩佐又兵衛の掛け軸が、値がどんどん吊り上がり、その駆け引きもまた
楽しかったし、ドキドキ、ハラハラ、久しぶりにいい噺に出会えたのである。
こういう噺もあるのだなと…でもなかなか演じ手のない噺でもあるし、
やはり今回も飛切りの貴重品だ。もうしばらくは聞けないだろう…という。
そんなことで…来週は月曜日(5月19日)が横浜での柳家小満んの会。
演目は「雛鍔」「髪結新三(上)」「髪結新三(下)」の三席である。楽しみ!

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