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2014年11月13日 (木)

第270回 柳家小満んの会

13日といえば、小満んの会である。夕方から日本橋へ。
今年の締めくくりは「文七元結」。楽しみにしていた。
聞けてよかった。今年も六回、無事に聞けて、感謝!

柳家さん坊:堀の内
柳家小満ん:城木屋
柳家小満ん:看板のピン~将軍の賽
柳家小満ん:文七元結

一席目は「城木屋」である。圓生師匠の録音が残っているが、
私が聞いたことあるのは、落語研究会で放送された歌丸師匠ので、
ハッキリいって、あまり面白い噺ではなかったが、しかしそういう噺こそ、
小満ん師匠の味が出るので、これは期待である!似たような噺では、
去年、関内で聞いた「八百屋お七」など、たまらなく魅力的だったし。
元は三題噺であり、江戸時代の名人で初代三笑亭可楽の作だそうな。
「江戸一番の評判娘」「伊勢の壺屋の煙草入れ」「東海道五十三次」
という三つのお題が出されたようで、この「評判娘」が城木屋のお駒さん。
つまりは浄瑠璃の「恋娘昔八丈」のことであり、当時のお客さんなら
誰でも知っていたのは、「白子屋政談」のお熊さんということである。
城木屋の番頭で丈八が、突然に色気づく…というのが面白さであり、
騒動を引き起こして、四十過ぎのブ男というのだから、この人は、
持参金で白子屋に婿養子に入る番頭のことだろう。その辺を意識して
この「城木屋」を聞くと…実にバカバカしくて、おふざけで、茶化して、
面白いのである。お駒さんに養子を迎えると聞いて、殺害を企てる…
番頭の丈八だが、当然のように大失敗。所持品を落としていって、
それが「伊勢の壺屋の煙草入れ」であり、発覚、捕えられてしまう。
そこからは大岡裁きとなり、丈八が「東海道五十三次」で白状する。
オチは、丈八が駿河の御城下の出で、奉行「この府中(不忠)者め」。
二席目ははじめて聞く「将軍の賽」だが、これが小噺よりも短い…
三分もかからないと…賽子といえば博打だが、まずは「看板のピン」。
博打の元祖はお釈迦様で、堂を取る、寺銭、寺方の言葉が多く使われ、
博打で無一文になることを「お釈迦になる」と今回も導入はこの説明。
船霊様に賽子を祀って…いざというとき、賽子で方角を占うのだが、
師匠の「看板のピン」は時化で漁に出られない漁師たちの博打である。
この風景が実にいい。博打仲間の荒々しさが、威勢のいい漁師達という。
この辺の話題が、実は…後の「将軍の賽」に絡んで、つながっているのだ。
噺の説明として、知識を仕込んでおくわけだけど、その辺の作り方って、
師匠は本当にお見事で…幕末の江戸城で、開国を迫られる緊迫の状況、
そこで行き詰った老中たちは賽子博打をはじめる。賽子で、国の行く末を
占っている…というのは表向き。そこに将軍様が加わるのだから可笑しい。
というふうに振り返ってみると、賽子の話、博打の話、賽子の目の方角、
噺の「看板のピン」、幕末開国の話題、水戸の徳川斉昭「釣鐘の大砲」、
そして賽子の目で、徳川幕府の仕組みを説明する…傑作ではないか!
些細な小噺が、師匠の構成力で、素晴らしい一席に仕上がってしまった。
「看板のピン~将軍の賽」は、また聞いてみたいな。改めてそう思った。
聞いているときは、わからなかったけれど、考えるとこれは感動的だ!
仲入り後は、たっぷり「文七元結」である。おそらく50分超ではないかと。
五年前に横浜の小満んの会で聞いているが、それ以来、「文七元結」は、
小満ん師匠が一番。長兵衛さんのイメージがぴったり来るのである。
もちろん、佐野槌のおかみさんも近江屋卯兵衛の旦那も実にいい。
でも考えてみると、お久が十七歳だというのだから、江戸だと親も若いし、
すると長兵衛さんは三十代後半、行っても四十過ぎというのが本当かも。
しかしやはり、聞く方としてみれば、左官の名人、親方として、憧れだが、
小満ん師匠が描き出すような…懐の深い人柄を期待したいのである。
今回の「文七元結」は、小満ん師匠もますます、さらっとした仕上がりで
力みもないし、描き込みもしすぎない…だからこそ、心に深く響いてくる。
各場面で、感動的な台詞がたくさんあるが、その度にぐっときてしまった。
圓朝師匠の噺が、その後の百数十年で、練りに練り上げられているので
とにかく隙のない完璧な噺なのであり、何か考え出して、演出することは、
わざとらしくなるだけであり、臭い芝居を見せるだけで、無意味なのかも。
その点、小満ん師匠は、人物の性格付けと、あとは言葉だけである。
本当は、それが話芸であり、落語なのかも。そういうことも考えさせられた。
とにかく感動的であり、もう今年は、他に「文七元結」は聞きたくないな!
という結論に達したところで…来週の11月19日は、横浜の小満んの会。
演目は「猪買い」「忍三重」「八五郎出世」の三席である。楽しみだ!

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