マウリツィオ・ポリーニ
ポリーニの最新盤でベートーヴェンのピアノ・ソナタ集。
第16番から第18番の作品31と第19番、第20番の作品49。
2013年6月、2014年6月にミュンヘンのヘルクレスザールで収録。
1975年にはじまったベートーヴェンのピアノ・ソナタ録音であるが、
39年の月日を経て、今回の演奏で、ついに全集が完成した。
1997年の「ワルトシュタイン」、そして前回の作品22(第11番)、
そして今回の「テンペスト」は、再録音で二種類の演奏が存在する。
近年のポリーニのベートーヴェンは、異常にテンポ設定が速い。
ここでも、これまで聞いたことのないような急速なスピード感覚で、
しかしそれが、非常に滑らかで、角の取れた表情を生み出しており、
ポリーニの現在を感じては、非常に満足である。響きが何より美しい。
とにかく速いので、細かいパッセージのディテールは聞き取りにくい…
そうした傾向になりつつあるのだが、ポリーニの演奏は基本的に
スッキリとして、よりシンプルに明瞭なので、相変わらず気持ちがいい。
「テンペスト」は1988年の名盤があり、私の大好きな演奏だが、
今回はずっと抑制が利いて、音楽の流れがさらに自然になって、
何とも素晴らしいのである。もちろん枯れている印象もあるけれど、
ポリーニのずっと力が抜けて、ますます透明な境地は魅力的だ。
全集完成までの長い道のりが、話題性となっているところがあるが、
実際に近年の演奏は、大きく解釈に変化が見られるのであり、
常に進化し続けるポリーニであるから、完成を終わりにしないで
この先もどんどんと再録音を続けてほしいところである。
DG 00289 479 4325
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