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2016年5月19日 (木)

第133回 柳家小満んの会

今日は横浜の小満んの会で夕方から関内へ。
「ちょいと早いけど」って、おかみさんの開場で
その少し前に到着して、入口で並んでいた。

春風亭一猿:道灌
柳家小満ん:がまの油
柳家小満ん:馬の田楽
柳家小満ん:抜け雀

一猿さんの「道灌」にちなんで、昔の名人による興味深い話から。
黒門町の文楽師匠が前座のときに最初の一年は、「道灌」しか
教えてもらえず、当時の寄席は、噺家が歩いて移動していたので、
穴が空くことも多かったそうだが、文楽師匠は「道灌」ひとつしか
できなかったので、一日に同じお客さんの前で「道灌」を三回も
演じたことがあったそうである。お客も気まずく、聞いていないし、
やめたくなっちゃったそうだが、すると…「おい、若いの!」って、
切れるようなお札で、一円札を三枚、三円のご祝儀をくれたという
そういう粋なお客さんがいたそうなのである。「道灌」一席が一円だ。
生真面目な文楽師匠なので、きっと一所懸命に喋っていたのだろう。
三度とも…同じように…手を抜かず。見ている人はちゃんと見ている。
同じく名人の盲(めくら)の小せん(初代小せん)もやはり前座の頃、
「道灌」ひとつで一年を演じ通したらしい。ネタの多い三代目圓馬は、
毎日、別の噺を演じていたが、小せんには敵わないと褒めたとか。
昔の名人の話って大好きなのだけど、そういうところにはじまって、
今回の三席に共通のテーマはあるのか?って、考えていたのだが、
特に思い浮かぶところはなくて、聞いていても気付かなかったし、
素直に行くならば、がま(蛙)、馬、雀で、生き物シリーズという。
ついでに最初に上がったのがお猿さんで。他に何かあるのかも?
なんて深読みしたくなるけれど、おそらく師匠は関係ないと仰る。
「がまの油」は、前半のがまの油売りの口上で聞かせて、それが
後半、酔っぱらったために大失敗して、壊れたところで笑わせる…
でもそれに関しては、大して面白い噺でもなくて、しかしそこで
マクラで昔の縁日の見世物小屋の様子が語られて、それがいいと
大道商いの情景、そのイメージも膨らむのか?「がまの油」って、
素晴らしいのだ。今回はお馴染み「蛙娘」の呼び込みにはじまって、
「べな(逆さ鍋)」「大笊小笊(大猿小猿)」「六尺の大イタチ(板血)」。
二席目は「馬の田楽」で、師匠のこの噺は二度目だが、私は好き。
見るからに田舎なのだろうけど、風景に合わせて、登場人物も
その全員がのんびりしているという。でもここでの馬子さんは、
馬が姿を消すと大慌てになり、そこで他の人物たちが、まるで
嫌がらせのようにゆっくりとした対応で、ますます慌てるのだが、
そこが面白い。こんなに抜けている人もいるか!って、じいさん、
ばあさんばかりだけど、噺の中でも地方は高齢化しているらしい。
そして「抜け雀」だが、後半は小満ん師匠のアレンジが絶妙で、
一文無しの絵師は、駿河の城に画(襖絵だったか?)を描きに
小田原を立つという設定。画を仕上げて、たっぷり礼を貰って、
それで江戸への戻りは、立派な形(なり)をしているのである。
雀の画を見に来た父上が描くのは鳥籠ではなく、呉竹であり、
竹に雀の画になって、小田原城主、大久保加賀守は、その画に
二千両の値を付けたが、旅籠の主人は、絵師にこの画は売らず、
家宝にするという。文無しの絵師は、今度は懐も温かくなって、
早速に泊まり賃の前の五両、今度の五両、それに祝いで五十両、
しめて六十両を払うが、主人は「こんなにはいただけません」と
すると「ほんの雀の涙である」というオチである。五羽の雀に
黒々と呉竹の画が描かれていると…そこで文無しの絵師は、
衝立の裏に讃をして、さらには狂歌で「旅人は雪呉竹の村雀、
止まりては立ち、止まりては立ち 文無」と書く。描き足すところで
止まり木はわかるけど、鳥籠を描くというのはおかしいと思っていた。
雀が画から抜け出る…といっても鳥籠の画に二千両はどうも変で
狂歌に絡んでの呉竹だけど、画として、この方が合理的である。
またサゲが「籠描き」でないので、マクラにおいても街道の雲助で
駕籠舁きが忌み嫌われた…というのは、なかったことに後で気付く。
そして文無しの注文通り、旅籠のおかみさんがすっかり愛想よく、
客扱いがよくなったのも愛嬌だ。この辺の工夫はさすがに師匠!
ということで、次回は7月21日(木)の第134回 柳家小満んの会、
演目は「千両みかん」「那智の滝」「天災」の三席である!楽しみだ。

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