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2016年9月10日 (土)

日和下駄の風景 1~序

永井荷風の「日和下駄」を東京散歩の参考に
少しずつ読んでみよう。大正三年のことだそうで
東京市中と表現しているところに時代を感じる。

ここにかく起稿の年月を明(あきらか)にしたるは
この書板(はん)成りて世に出づる頃には、
篇中記する所の市内の勝景にして、既に破壊せられて
跡方もなきところ尠(すくな)からざらん事を思へばなり。

この当時にもすでに失われつつあったのだから
平成の現在には、一体どうなっていることか。
いくつか例があげられている。それがまたいい。

見ずや木造の今戸橋は蚤(はや)くも変じて鉄の釣橋となり、
江戸川の岸はせめんとにかためられて再び露草の花を見ず。
桜田御門外また芝赤羽橋向(むこう)の閑地(あきち)には
土木の工事今まさに興らんとするにあらずや。

河川改修の護岸工事は、繰り返す川の氾濫を防ぐなど、
きっと目的もあったのだろうが、こうした記述を読むと
都市の近代化で失われた風情に想いが向くのである。
赤羽橋の辺りで開発が進んでいたようだが、大正のことで
もちろん東京タワーはなく、戦後はますます激変したわけで。

昨日の淵(ふち)今日の瀬となる夢の世の形見を伝へて、
拙きこの小著、幸に後の日のかたり草の種ともならばなれかし。

永井荷風先生のおっしゃる通り、かたり草の種である。

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