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2016年9月28日 (水)

日和下駄の風景 2~日和下駄

永井荷風「日和下駄」 第一 日和下駄より

私は神田錦町の私立英語学校へ通っていたので、
半蔵御門を這入って吹上御苑の裏手なる
老松(ろうしょう)鬱々たる代官町の通(とおり)をば
やがて片側に二の丸三の丸の高い石垣と深い堀とを
望みながら竹橋を渡って平川口の御城門を向うに
昔の御搗屋今の文部省に沿うて一ツ橋へ出る。
この道程(みちのり)もさほど遠いとも思わず
初めの中(うち)は物珍しいのでかえって楽しかった。
宮内省裏門の筋向(すじむこう)なる兵営に沿うた
土手の中腹に大きな榎があった。その頃その木蔭なる
土手下の路傍(みちばた)に井戸があって夏冬ともに
甘酒大福餅稲荷鮓(いなりずし)飴湯(あめゆ)なんぞ
売るものがめいめい荷を卸(おろ)して往来(ゆきき)の
人の休むのを待っていた。車力や馬方が多い時には
五人も六人も休んで飯をくっている事もあった。


神田錦町にあった高等師範学校附属尋常中学校に
編入学したのは、1891年(明治24年)とある。
上記の情景は、明治20年代の東京の様子らしい。

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