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2016年11月13日 (日)

第282回 柳家小満んの会

今年最後の小満んの会は、日曜日の開催で
早めに出掛けて、御茶ノ水から神田明神にお参り。
いろいろ寄り道をして、日本橋まで歩いていった。

20161113b

あちこちで再開発中の日本橋界隈だが、
「室町三丁目」交差点がすっかり更地になって、
驚きの状況だ。これもいまだけと記録写真。

柳家小多け:道灌
柳家小満ん:裸の嫁入
柳家小満ん:黒雲お辰
柳家小満ん:富久

神無月の十月には、出雲に神様が集まって、つまりは
出雲は神有月なのだけど、そこで縁結びが行われて、
縁というと御夫婦の縁ということで噺に入っていくのだが、
「裸の嫁入」という噺、もちろん今回はじめて聞くけれど、
全体に「たらちね」にそっくりである。裸の嫁入というのは、
何も持たずに嫁に来るという。夏冬の物は持ってくるが、
行火(あんか)と渋団扇だけ。この台詞も「たらちね」で聞く。
しかしこちらは、言葉が丁寧という傷はなく、歳は二十三で
顔の具合も十人並。ただ嫁ぐのは二度目ということで、
先の旦那は亡くなっている。八つぁんは喜んでいるが、
婚礼の席で、三々九度の真似事で、仲人の大屋さんは、
謡のひとつも吟いたいところだけど、不調法だから…って、
するとお嫁さんは、二度目で慣れているからと唄い出し、
街道の雲助の唄で、(裸の嫁入だが)、唄の文句で、
後から長持がやってくるというオチである。これまた珍品。
続く「黒雲お辰」は、大岡政談にある噺で、実話に基づく…
ともいわれるそうだけど、奈良から七十五両の金を預かり
江戸へ出てきた真正直な百姓が、つい広小路の賑わいに
気を取られて、金を掏られ、昌平橋で身を投げようとするが、
それを助けるのが黒雲お辰、七十五両を与え(返す?)、
帰りの路銀に十両の金も与える。黒雲お辰は八辻が原を
縄張りとしている掏り、盗みの頭であり、その十年後には
お縄になって、処刑が言い渡されるが、老中の手続きに
不備があり、黒雲お辰がたくさんの人助けをしていたことで
大岡越前は助ける裁きをする。十年前の七十五両の一件で
御赦免となるのだ。黒雲お辰は改心して、身延山で出家して、
諸国を巡礼しているが、奈良の山村で助けた百姓に再会し、
かつて助けたことでいま助けられているのだけど、縁あって、
というところは、一席目の「裸の嫁入」に通ずるのである。
黒雲お辰はそこに庵を構え、余生を送ったということらしい。
仲入り後は「富久」。師匠の「富久」は、思い出すので四度目か、
もうちょっと聞いているような気もするのだけど、正直に書くと
はじめてのときが最も衝撃的にとにかく感動したのだが、
今回は二年ぶりになるのか?少々久しぶりでもあって、
ものすごくよかったのである。先日の余一会で聞いた…
「明烏」じゃないけれど、余裕があって、じっくりと丁寧に
演じられていた気がする。それは、酔っぱらう場面であったり
火事場に向かう緊迫感、その様子が目に浮かぶようであり、
久蔵の暑い寒いの温度感や時間の経過、心の変化の含めて
落語の見て楽しむ部分である。基本的に小満ん師匠の落語は、
オーバーに見せるのではなく、話芸に徹していると思うのだが、
それが創り出す聞く人の心の中でのイメージの広がりであり、
その豊かさであり、かなり映像的な噺でもある「富久」であって、
非常に中身の詰まった一席であったと思う。富くじの一件と
火事に振り回される久蔵の生活が、同時進行に進むのであり、
壮大な物語と劇的な展開で、こんなにドキドキする噺はないが、
やはり黒門町から伝わる「富久」で、小満ん師匠が最高だと思う。
いろいろ好みがあって、人によって、意見も様々だろうけれど、
小満ん師匠の「富久」が、私にとっては、間違いなく究極である。
ちょっと細かいことを書くと富興行の場所だが、文楽師匠は、
深川八幡だったそうだが、小満ん師匠は湯島天神にしていて、
奉加帳で寄付を募ってまわるのに蔵前から本郷へ向かう途中、
湯島の切通しで、大そうな賑わいに富の当日に遭遇するという
ここは非常に合理的で説得力があって、小満ん師匠らしい。
こういうところがリアリティであって、私は好きである。重要。
ということで、ちょうど二週間後、27日は関内の小満んの会で、
「子別れ」の(上)(中)(下)の三席。通しである。これは期待!

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