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2016年11月21日 (月)

小噺「徒乱不塔の人々」

えェ、ここは江戸の中心、日本橋でございますが、そこに
大そう羽振りのいい徒乱不(とらんぷ)屋という店がありまして、
持っている長屋も変わっておりまして、間口は変わりませんが、
高さが百十二間という、現在の値に換算いたしますと
二百二メートルという、58階建ての長屋でございまして、
それを徒乱不塔などと申しますが、そこに住んでいる者も
また地主に劣らぬ、一風変わった者ばかりでございまして、

「よぉ、ずいぶん威勢がいいじゃねえか、博打で儲けたか」
「いやぁ、すってんてんに取られた、一文無しだ」
「お前ェ、そのわりには、ずいぶん偉そうにしてるじゃねえか」
「長屋の地主さんが今度将軍様になるのよ」
「馬鹿なことをいうもんじゃねえ、将軍様は徳川様に
決まってるじゃねえか、間抜けなこといってると笑われるぜ」
「俺もそう思ってたんだけどよぉ、それがそうでもねえらしいや」
「なに、この前ェ、大騒ぎしてた、大将軍選挙ってやつかい」
「そうよ、蓋開けたら、選ばれちまったんだから仕方ねえや」
「取り返しがつかねえってやつだな」
「まさかそんなことはあるめェって思ってたんだけどよぉ」
「そうさ、みんな、そういってたぜ」
「隠れキリシタンじゃねえ、隠れ徒乱不ってのがいたらしいや」
「なんだ、モグラみてェな野郎だな」
「うちの地主は、普段から口が悪くてよぉ、嫌われてるんだ」
「聞いてるぜ、自分とこの店子しか、よくいわねえらしいな」
「それがよう、決まった途端にこの前も浅草安倍川町の
地主ってのが訪ねてきてよぉ、挨拶していきやがった」

「長ェものには巻かれろってやつだな」
「土産もらって、気をよくしてたぜ」
「お城ん中もそっくりお役人を入れ替えるらしいなァ」
「それでお店には、引っ切り無しに人が出入りして、
誰がお役に就くのかって、大騒ぎだァ」

「それじゃ、これから江戸の街も変わるだろうなァ」
「いやァ、そうでもあるめえ」
「どうしてだい」
「選挙でもう、札は切っちまった」

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