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2016年12月22日 (木)

圓朝速記~真景累ヶ淵(三九)

新吉はお賤のところへ通い、三十両の金で
三蔵とも縁を切り、家の物も質に持ち出して、
病気のお累を放って、遊び歩いているが、
心配した三蔵がついにお累の様子を見に来る。

新吉は家(うち)へ帰ると女房が、火傷の痕で
片鬢(かたびん)兀(はげ)ちょろになって居り、
真黒な痣(あざ)の中からピカリと眼が光る
お化の様な顔に、赤ん坊は獄門の首に似て
居るから、新吉は家へ帰り度(た)い事はない。

幽霊よりもこういう表現の方がよっぽど恐く…

女房お累が少し意見がましい事をいうと、新吉は
腹を立てて打ち打擲(ちょうちゃく)致しまするので、
今迄と違って実に荒々しい事を致しては家を出て
行(ゆ)きまするような事なれども、…

大人しく気の小さかった新吉だが、この場面では、
非常に凶暴になっており、悪党らしくなっていく。
弱いお累に対して、辛く当たるのは人の醜さだ。

與助「…新吉さんお累さんの塩梅(あんべえ)は何うで、
と云うと、何だ汝(われ)は縁の切れた所(とこ)の奉公人だ、
くたばろうと何うしようと世話にはならねえ、と斯う云うので、
彼(あ)の野郎彼様(あん)な奴ではなかったが、
魔がさしたのか、始終はハア碌(ろく)な事はねえ、…」

新吉の冷酷さが語られているが、あんな奴ではなかった…

と日暮方で薄暗いから土間の所から探り探り上って参ると、
煎餅(せんべい)の様な薄っぺらの布団を一枚敷いて、
其の上へ赤ん坊を抱いてゴロリと寝ております。
蚊の多いに蚊帳(かや)もなし、蚊燻(かいぶ)しもなし、
暗くって薩張(さっぱ)り分りません。

こういう描写がとにかく薄気味悪い。夏の暑さも忘れる。

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