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2017年9月19日 (火)

第141回 柳家小満んの会

夕方から横浜の小満んの会で関内ホールへ。
その関内ホールが11月から工事で休館となり、
会場が吉野町市民プラザへと変更になる。
長年、通い馴れた会の様子が変わるのは、
寂しい気もするのだが、それは仕方ないか。

春風亭きいち:芋俵
柳家小満ん:渡しの犬
柳家小満ん:酢豆腐
柳家小満ん:九州吹き戻し

「九州吹き戻し」が出ていたので、この時期、台風の襲来が
恐いなと思っていたのだが、案の定、これに合わせたように
台風18号が来て、そのまさに九州で大きな被害が出たけれど、
台風一過の晴天で、こうして無事に聞けたことは幸いである。
前の棚卸しのときもそうだったが、師匠の「九州吹き戻し」は、
本当に台風を呼んでしまうので、すごい。直前に過ぎてくれて、
そのお陰で、前回も今回も聞けているのだ。それはいいとして、
一席目は「渡しの犬」で、四年前の日本橋の会で聞いているが、
旧制高校というから戦前か?英語の教科書に載っていたという
ナサニエル・ホーソンの「デヴィッド・スウォン」の翻案ものであり、
辞書を引きつつ原文も読まれたそうで、ニューハンプシャー州の
デヴィッド・スウォンが、ボストンで鞄を売っているおじさんの元へ
旅しているのであり、泉のほとりで、次々起こる物語というのが、
この話なのだが、ちょうどその頃…時は江戸であり、矢切の渡し、
舟を待つ間、木陰の昼寝で、そこで起こる出来事が落語である。
寝ている間に自分の知らないところで、よいことも…悪いことも…
いろんな事件が目の前で起きては何もなかったように過ぎていく。
人生とはそういうもの、それをプレイバック、時間の巻き戻しで
紹介していくこの手法は、落語では珍しい。ちょっとしたきっかけ、
それはほんの些細なことだけど、人生を大きく変えてしまうような
そんなことも起こりうるし、しかしそれも僅かにかすめ、指の間を
すり抜けては、我々は平穏無事に生きている。というのを夢の中、
三幕の物語で語られるのだが、ふと目が覚めると何も変わらず、
渡しの舟が出るのであり、そうなるはずの人生が回りはじめる。
のんびりとした時間が流れ、これまた実に独特の味わいである。
二席目はお馴染みの「酢豆腐」だが、小満ん師匠も夏というと
毎年のようにどこかで演じているのではないかと思うのだが、
滑らかに快調なお喋りで楽しかった。「ちりとてちん」と違って、
こちらは腐って変色のしている豆腐をそのまま出すのであり、
見た目も「酢豆腐」、酸っぱい臭いで「豆腐の腐った味」って、
若旦那もそれに気付いているはずなのだが、乙を気取って、
変なプライドがあって、決して断らない。口を付けているのは、
ほんの一口、僅かなのだけど、臭いと目に染みるのがきつく、
扇子を大きく広げて、バタバタと仰ぎながら、口元を隠して、
無理をしている姿をまだ隠し続けているのは何とも面白い。
こういう場面を過剰に演出しないのが、師匠の演り方だが、
それは同時に気障な若旦那の意地であり、面白がっている
江戸っ子たちの遊び心、茶番劇のような…夏の風情である。
そして「九州吹き戻し」である。棚卸しで聞いて以来、二度目。
前に聞いたときははじめてだったので、探りながらでなかなか
すべてを把握できた印象はなかったのだが、それからすっかり
筋も忘れてしまっていたけれど、今回は実に面白かったのだ。
肥後熊本を出て、九州を北上、しかし玄界灘で台風に見舞われ、
そのまま流され、薩摩に打ち上げられる…江戸とは逆の方角に
吹き戻されてしまった、という展開だが、玄界灘へということは、
九州から江戸へ向かう船は、太平洋でなく、瀬戸内海を進む
ということだろうか。北前船などと同様に海岸線から離れず、
港で取引をしながら進んでいくのだろうけど、瀬戸内海を経由、
大坂へという海路だったのかも。もうひとつ、前回も同じことを
書いたと記憶しているのだが、熊本から江戸が二百八十里、
薩摩から江戸が四百里、差し引き「百二十里吹き戻される」
というサゲだけど、熊本から鹿児島が距離で120里≒480㎞、
ここが謎なのである。参考にGoogleで熊本駅から鹿児島駅、
歩いての移動をコース検索すると170㎞を37時間と出る。
百二十里だと遠すぎるのだが、別の意味があるのだろうか。
ちなみに熊本城から江戸城までを検索してみると1157㎞である。
計算して里に直すとこれは二百八十九里となった。概ね正しい?
鹿児島駅から江戸城で検索してみると1330㎞と出て、里に換算、
およそ三百三十二里である。しかし薩摩藩島津家の参勤交代は、
1700㎞で四百四十里とあり、「薩摩から江戸が四百里」というのも
どうも昔からそういわれていたようである。おそらく昔の速記にも、
四百里とあるのだろうけれど、この辺りがどうもスッキリしない。
ということで未解決のまま、次回は11月20日(月)の第142回、
演目は「奈良名所」「なめる」「お直し」の三席、会場は吉野町。

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