« シュトゥットガルト放送交響楽団 | トップページ | ロイヤル・コンセルトヘボウ »

2017年10月31日 (火)

末廣亭余一会 小満ん独演会

新宿末廣亭の10月余一会は今年も小満ん独演会。
開場の少し前、向かう途中に新宿三丁目の交差点で、
偶然におかみさんにお会いして、すれ違いにお喋りして、
テンションが上がる。毎年、この会を楽しみにしている。

春風亭きいち:道灌
柳家小はぜ:加賀の千代
柳家一九:だくだく
江戸家小猫:ものまね
柳家小満ん:文違い
入船亭扇遊:天狗裁き
柳家小満ん:社長さん
柳家小菊:俗曲
柳家小満ん:胴乱幸助

小満ん師匠は「文違い」から、末廣亭のある新宿三丁目は、
甲州街道の宿場で内藤新宿であり、最後にできた宿場で、
内藤家の屋敷の一部を切り取って、新しくできた宿場という、
それで「新宿」だそうだが、その新宿にちなんだ噺である。
師匠の「文違い」は、以前に日本橋でも聞いているけれど、
私は大好きで、お杉は芳次郎の忘れていった手紙を見つけ、
半七もまた、お杉宛の手紙を見つけ、騙されていたのを知り、
怒り狂っていい合う掛け合いが最高。「色男がいるんだろう」
「色女がいたんだい」って、激しい応酬は実によいテンポ感。
ヒステリックなお杉とどうにも治まらない半ちゃんで、それに
割って入ろうとする田舎者角蔵が、おっとりとしていい仲裁。
というのを書いて思い付いたが、今回の三席のキーワードは
「仲裁」?「胴乱幸助」の幸助さんは、喧嘩の仲裁が生きがい。
仲入り後の二席目は、「社長さん」という噺だそうで、ここでの
小使いの熊さんという人は、癇癪持ちの社長と社員の間で、
ある意味、仲裁役なのである。テーマは「仲裁」?偶然か。
「社長さん」は、初代の林家正楽作による新作だそうである。
正楽の名跡は紙切りで有名だが、新作をいくつも作っている。
時代としては、大正から昭和の初期といった感じであろうか。
聞いての印象は、戦後昭和の雰囲気。というのも師匠は、
セピア色で「三丁目の夕日」の感じだとマクラで仰っていた。
癇癪持ちの熊谷社長と小使いの熊さんがそっくりであり、
晩ごはんに熊さんを招待するはずが、急遽の変更によって
社長が来てしまったものだから、奥さんは熊さんと勘違いで、
いいようにからかってしまう。怒って帰ってしまった社長に
翌日、平謝りして、「社長が家内と思われたのは女中です」
というオチ。忘れていたのが出てきたので、記録しておいた。
そして三席目は「胴乱幸助」である。「棚卸し」で聞いて以来、
関内でも聞いたし、いろいろな場面で、師匠が演じている、
お馴染みになった噺である。上方の噺であり、大阪の人は
浄瑠璃に慣れ親しんで、「お半長右衛門」も誰でも知っている
というので成立する噺なのだと思うが、師匠は会話の中に
「お半長」の筋をうまく入れて、何にも知らない幸助さんと
「嫁いじめ」の状況を一緒に学んでいく仕掛けとなっており、
わざわざ京都へ仲裁に行くところでは、気持ちもひとつに
そのちぐはぐさがおかしくて、こんなにも面白い噺はない。
東京版の「胴乱幸助」では、東京駅から神戸行の鈍行で
三十数時間もかかって京都へ行くのであり、明治である。
東京の町に義太夫が大流行したのも明治になってからで
そこもぴったりだ。お半と長右衛門はとっくの昔に桂川で
心中したと聞かされて、下関行の急行で来ればよかったと
そうしたオチで、明治の雰囲気たっぷりなのが好きである。

|

« シュトゥットガルト放送交響楽団 | トップページ | ロイヤル・コンセルトヘボウ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 末廣亭余一会 小満ん独演会:

« シュトゥットガルト放送交響楽団 | トップページ | ロイヤル・コンセルトヘボウ »