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2019年9月 5日 (木)

バイロイト音楽祭2013

バイロイト音楽祭2013から歌劇「さまよえるオランダ人」で
クリスティアン・ティーレマン指揮で第2幕の途中から第3幕。
2013年7月25日にバイロイト祝祭劇場におけるライブ録音。
第2幕はゼンタとエリックの二重唱が続き、そうしたところで
ティーレマンは美しく細やかな表情を生み出して、これまでの
骨太な響きとは全く違って、このメリハリというのが圧倒的だ。
ダーラントに連れられてオランダ人が登場するが、ゼンタと
オランダ人の対話になり、ワーグナーの後の楽劇とは違い、
まさにオペラ的な雰囲気で、歌手の存在が実に引き立つ。
オランダ人はサミュエル・ヨンで、写真を見るとアジア系の
演出の上でも異国感をより強調しているのかもしれないが、
音では低声の魅力に痺れる。あまり前に出すぎることはなく、
舞台の情景に調和している印象かも。そして第3幕になり、
水夫の合唱となって、ティーレマンはここぞと豪快な音色で
重い足取りで進めていくが、恐ろしい幽霊船の情景となって、
嵐の響きとなるとまた絶妙なコントラストで流麗さを出して、
とにかくティーレマンの自在な操作術に聞きほれてしまう。
でも思うのは、今日のティーレマンは、重さを場面によって、
際立たせるのが、自身の演奏スタイルとなって、全体では
かなり動きがよくなって、響きもスッキリと整理整頓されて、
すべてにおいて重厚さがあふれていたかつての演奏とは
変化して研き抜かれている。もっと渋い音だったと思うが、
いまは眩しいばかりの輝きも聞かれて、とにかく音が美しい。
ティーレマンのワーグナーは無敵の存在だ。ずっとそれは
思い続けてきたことではあるが、聞くたびに思い知らされる。
ちなみに聴衆の反応はというと、珍しくブーイングがなくて、
大絶賛の盛り上がりのようで、そこは映像を見ろ!という、
ちょっとここまで受け入れられていると興味が湧いてくる。


バイエルン放送の映像を見るとダーラントはスーツ姿で
会社の経営者であり、ボートに乗っている。オランダ人が
スーツケースを携えて現れ、娘のゼンタと結婚させる…
というよりは、商談をまとめ、契約を結ぶという雰囲気だ。
どういう会社かというと、紡ぎ歌の場面で乙女たちは、
倉庫会社の社員で扇風機をダンボールに梱包している。
舞台上には無数のダンボールが並んでいるという情景。
第3幕になって、元の設定の船乗りたちはセールスマン。
全員、揃いのグレーの背広姿である。そこに黒の一団が
ゾンビのように現れて、幽霊船だからそれでいいのだが、
最後はゼンタがオランダ人を追って、ふたりは抱き合い、
すると扇風機が、ふたりの姿の電気器具に変わって、
それがダンボールに収められ出荷されるという演出。
ゼンタの自己犠牲により、オランダ人の呪いが解けて、
つまり救済されるということを意味しているのであろう。

OPUS ARTE OA CD9043D

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