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2023年10月31日 (火)

ウラディーミル・アシュケナージ 35

ウラディーミル・アシュケナージ指揮チェコ・フィルで
ドヴォルザークの交響曲 第9番 ホ短調 作品95
1999年8月27,28日にプラハのルドルフィヌムで収録、
序曲「自然の王国で」 作品91
序曲「謝肉祭」 作品92
序曲「オセロ」作品93
1999年5月21,22日にプラハのルドルフィヌムで収録。
歴史的にチェコの指揮者が首席指揮者を務めてきた
チェコ・フィルであるが、ドイツのゲルト・アルブレヒトが
はじめての国外の指揮者で迎えられて、その後任で、
アシュケナージが招かれたのだが、チェコ・フィルは、
そこでは世界的スター性を求めたといわれるけれど、
ここでのドヴォルザークを聞いても、たしかにどこか、
それまでの伝統的な雰囲気とは違うように感じられる。
アシュケナージならではのキッパリと明確な音作りで
熱い想いで、ドヴォルザークの音楽に力を注ぎ込み、
シンフォニックに躍動感のある演奏に仕上げている。
チェコの自然体な音色ではなく、様々な意図があり、
それが音楽の隅々にまで反映されて、緊張感がある。
この当時のそれが新しい空気ということであったのだ。
チェコ・フィルの音色というのが変わることはないので、
その新鮮さが心地よく、魅力であることは間違いない。
後半に序曲が3曲取り上げられているが、交響曲と
同時期の作曲であり、作品91,92,93と並んでいるのも
興味深いのである。そこにも注目で、これは楽しめた。

EXTON OVCL00322

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2023年10月30日 (月)

ベルナルト・ハイティンク 53

ベルナルト・ハイティンク指揮オランダ放送フィルで
ブルックナーの交響曲 第7番 ホ長調
2019年6月15日にアムステルダム・コンセルトヘボウ。
ハイティンクの晩年のブルックナーを聞いてきたが、
このアムステルダムでの交響曲 第7番がCDでは、
最後の録音となっている。この年の夏の音楽祭で、
同じく交響曲 第7番をウィーン・フィルと演奏して、
ハイティンクは90歳で引退している。2021年秋に
ロンドンの自宅で亡くなったが、この演奏は同時に
故郷オランダとの別れでもあったと格別なのであり、
そういう話を聞くと、感動なくしてはとても聞けない。
音楽の骨格を際立たせることはなくなり、穏やかで
やはりテンポはゆったりと音の連なりが特長であり、
この悠然とした印象は、ブルックナーの交響曲には
ぴったりなのである。張り詰めた空気がなくなって、
明るく、透明度は増し、どこか軽やかにも感じられて、
第2楽章の盛り上がった後に訪れる安らぎなどで、
その清らかさは、不思議なぐらいの美しさである。
神秘的な時間が流れ出し、これは経験できない。
遅くなると、音楽を隅々まで明瞭に聞かせるという、
そうした傾向が顕著になるのだが、ハイティンクは
デフォルメがなく、ただただ丁寧に音楽を扱って、
誠実なのであり、そこが聞く人を強く惹きつける。
68分という長い時間で集中が途切れることがない。
最晩年の録音も聞き終えてしまったが、ここからは
以前の演奏も振り返り、ハイティンクを聞いていく。

CHALLENGE CC72895

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2023年10月29日 (日)

ウィグモア・ホール 2012

ウィグモア・ホールのライヴ・シリーズから
クリスティアーネ・カルクのソプラノ独唱による
R.シュトラウスの目覚めたバラ、赤いバラ
乙女の花 作品22
フォーレのネル 作品18-1
イスファハーンのバラ 作品39-4、バラ 作品51-4
ドビュッシーの「忘れられたアリエッタ」より
グリーン、憂鬱
プーランクの「偽りの婚約」~花
R.シュトラウスの夜 作品10-3
黄昏の夢 作品29-1、白いジャスミン 作品31-3
ウォルフの秘めた愛、夜、災難、夜の魔法
ベルクの初期の7つの歌曲
(アンコール)
ヴォルフの私を花で覆って下さい
シューマンの君は花のように 作品25-24
ピアノはマルコム・マルティヌーで
2012年7月19日にウィグモア・ホールで収録。
クリスティアーネ・カルクによる歌曲リサイタルで
バラやジャスミンといった花や乙女の曲が選ばれ、
まさに可憐な仕上がりだが、音楽は渋めである。
悩みは多く、やはり災いは夜に降りかかるのか。
そんな世界観であろうか、忍び寄る魔の存在。
しかしそれにしても凝った曲の構成になっており、
後半のR.シュトラウスからウォルフへ、そして
最後にベルクの初期の7つの歌曲というのは、
何ともよい流れだ。ピアノが美しい響きである。

Wigmore Hall Live WHLive0062

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2023年10月28日 (土)

フランソワ・フレデリック・ギィ 9

フランソワ・フレデリック・ギィによる
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(第3巻)から
ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 作品2-1
ピアノ・ソナタ 第2番 イ長調 作品2-2
ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 作品2-3
2011年12月6日、2012年4月24,25日に
メッツのアルセナル劇場で収録されている。
このピアノ・ソナタ全集も第3集になり、後半だが、
最初の作品2の3曲と後期の組み合わせであり、
盛り上がってくる。やはり後期のピアノ・ソナタは
楽しみだが、その前に初期のベートーヴェンを聞く。
ゆったりと穏やかな空気の中で音楽を進めていき、
角の取れた丸みのある響きがここでも特長である。
暖かみを感じて、陰影は深く、大きさのある演奏は
どこか懐かしい音楽スタイルを思わせるのだが、
細やかな表現ではくっきりと切れ味もよく、そこは
やはり現在なのであり、実に魅力的な演奏である。
フランソワ・フレデリック・ギィの熟成された音楽と
ライヴ録音でもこの安定感のある充実した響きに
絶妙なバランス感覚にふれ、そこは味わいである。
やはり初期のピアノ・ソナタでも巧みな表情付けが
強みなのであり、本当に素晴らしいピアニストだ。

Zig-Zag Territoires ZZT318

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2023年10月27日 (金)

レオニダス・カヴァコス 4

レオニダス・カヴァコスによるブラームスで
F.A.E.ソナタ~スケルツォ ハ短調
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108
子守歌 作品49-4(ジョン・レネハン編曲)
ユジャ・ワンのピアノで
2013年12月27-30日にハンブルクで収録。
レオニダス・カヴァコスはなんと素晴らしいことか、
細い糸を大切に手繰り寄せていくような演奏で
研ぎ澄まされて、繊細なところだけを抽出して、
精妙に聞かせていく感じなのだが、その音楽は、
不思議とのびやかにいきいき飛躍する様子で
まさに針の穴に通していくような絶妙さである。
レオニダス・カヴァコスは、とにかく何もかもが
魅力的であり、そのすべてに聞き惚れてしまう。
ここでのピアノにユジャ・ワンが登場したのは、
実に不思議な印象であったが、DECCAだし、
話題性として起用したい思いは理解できるが、
カヴァコスの演奏に何か影響を与えてしまう、
そうした感じの演奏でもなく、丁寧に寄り添い、
室内楽を演奏している。これが正解であろうと
少しでも出過ぎたら、すぐにバランスは崩れて、
ここでの調和も一瞬に壊れてしまうであろうが、
しかし何かもう少しだけ、ユジャ・ワンの個性を
きらりと輝かせ、豊かに聞かせてほしかったと、
思うのである。紙一重なところではあるのだが、
現在ならば、また違った情景を描くのであろう。

DECCA 478 6442

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2023年10月26日 (木)

クリスティアン・テツラフ 5

クリスティアン・テツラフによるショスタコーヴィチで
ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77
ヴァイオリン協奏曲 第2番 嬰ハ短調 作品129
ヨン・ストゥールゴールズ指揮ヘルシンキ・フィルで
2013年11月27,28,30日にヘルシンキのミュージック・センター。
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲 第1番が、
いつからか一番好きなヴァイオリン協奏曲なのだが、
テツラフの演奏は本当に素晴らしく、最高なのである。
最初の頃から鋭い響きで辛口な印象はあったのだが、
基本的には、ごく美しい音色を聞かせているのであり、
そこにこの生々しい感触が加わって、質感にふれて、
それは感動的である。ストゥールゴールズの音作りも
明確に聞かせながら、音楽は立体的に奥行きがあり、
実に彫りが深く、豊かな音響空間を作り上げている。
すべてが揃っているという感覚がある。優れている。
第2番の方は、クレーメルの演奏を聞いてきたが、
ふれる機会は少ないのであり、久しぶりに聞いて、
ショスタコーヴィチの音楽にここまで心で感じ入って、
心地よく感じるときが来るとは正直、思わなかった。
ソ連の時代には、そしてその記憶があった頃には、
ショスタコーヴィチの音楽は、どこか近づきがたい、
そうした空気が感じられたし、それから30年が経ち、
やっとそんな記憶も薄れて、ショスタコーヴィチも
まもなく没後50年(2025)ということになるのだが、
その音楽はいまも生きていて、ますます盛んだと
偉大なものが感じられる。現在は聞きやすくなって、
テツラフの名盤に出会えるとそれはますます楽しい。

ONDINE ODE1239

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2023年10月25日 (水)

サイモン・ラトル 14

サー・サイモン・ラトル指揮チェコ・フィルによる
マグダレーナ・コジェナーが歌う民謡集で
バルトークの5つのハンガリー民謡(1929)
2022年11月にプラハのルドルフィヌムで収録、
ベリオのフォーク・ソングズ(1964)
2020年6月にプラハのルドルフィヌムで収録、
ラヴェルの5つのギリシャ民謡(1904-1906)
2022年11月にプラハのルドルフィヌムで収録、
モンサルバーチェの5つの黒人歌曲(1945)
2023年2月にプラハのルドルフィヌムで収録。
マグダレーナ・コジェナーはチェコの民謡だけでなく、
世界の国々の様々な言語による歌曲やその民謡に
強い関心を持っているようで、昔からそうした歌曲を
熱心に取り上げ、アルバムもまた、制作してきたが、
今回はラトルと共演して、管弦楽との民謡集である。
地域性が強く表れる民謡の世界って、素晴らしい。
言葉が大切なのであろうが、そこに暮らす人々の
生活が基になっているのであろうと音楽の向こうに
人を感じ、それは思う以上に癒しの音色なのである。
こんなにも心地のよい音楽って、久しぶりで最高だ。
ベリオのフォーク・ソングズを聞けるのがうれしいが、
ラヴェルのギリシャ民謡になるとさらに色彩は豊かに
モンサルバーチェはスペイン語の歌曲だが、黒人、
キューバ、ハバナとラテンアメリカの世界を描いて、
その情景は、ますます絵になって、魅力的である。
こんなにも楽しい時間はない。最高の一枚となった。

PENTATONE PTC5187075

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2023年10月24日 (火)

ラルス・フォークト 10

ラルス・フォークトによるモーツァルトで
ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271「ジュノーム」
ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
パリ室内管弦楽団との協演で
2021年4月25-28日にパリのシテ・ド・ラ・ムジーク。
ラルス・フォークトの遺作であり、闘病中の録音で
枯れた音楽を聞かせるのではないかと思わせるが、
そんなところはなく、前向きであり、進み続けようと
想いがあふれる、しっかりとしたモーツァルトである。
パリ室内管弦楽団は、ノン・ヴィブラートの弦楽器と
吠える金管の音色で思った以上にピリオド奏法だ。
優美さよりもその力強い響きには信念が感じられる。
ラルス・フォークトは、柔らかい音色に想いを込めて、
表情付けも濃密に聞かせるのではって思うのだが、
ますます厳格に最後まで音楽の核心に挑み続けた。
細部の余韻は美しいのだが、全体にしっかりと響き、
自身に厳しく、妥協は許さないという姿勢を感じる。
パリ室内管弦楽団との録音はこれで終わりだそうで、
(もう一枚はメンデルスゾーンのピアノ協奏曲だが)
するとピアノ協奏曲を聞けるのはこれが最後かも、
テツラフ兄妹とのシューベルトの室内楽も出ており、
ラルス・フォークトの独奏は、遺されていないのか、
いまのところ情報はないが、やはり惜しい存在だ。
ラルス・フォークトのピアノは、本当に素晴らしい。

ONDINE ODE1414

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2023年10月23日 (月)

エマニュエル・アックス 13

エマニュエル・アックスによるブラームスで
ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15
ベルナルト・ハイティンク指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との協演で
2010年12月15,17,19日にアムステルダム・コンセルトヘボウ、
首席奏者たちとの共演による室内楽で
シューマンのピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
2016年6月20日にアムステルダムのワロン教会。
ハイティンクの格調高い表現にはじまるのだが、
エマニュエル・アックスがあまりにも素晴らしい。
これこそが理想としかいいようがなく、感動して、
すっかり引き込まれ、何もかもが完璧なのである。
豊かに鳴り響き、音楽の重さもしっかりと伝えるが、
エマニュエル・アックスには力で押す表現はなくて、
基本的なところで脱力できており、それだからこそ、
音楽はのびやかに歌われ、隙なく、華やかでもある。
ブラームスのピアノ協奏曲はブレンデル、ポリーニ、
ギレリスと様々な演奏でずっと熱心に聞いてきたが、
エマニュエル・アックスの新しい録音は最高である。
細やかな表情付けでは、こんなに美しいことはなく、
ブラームスの成熟し、立派な音楽に聞かせつつも
この作品の若々しくて、瑞々しい心情というものも
しっかりと伝わってくる。エマニュエル・アックスの
近年の充実というのは、期待のできる存在であり、
その予想を超えて、圧倒的に優れているのである。
首席奏者たちとのシューマンのピアノ四重奏曲が
前半に収録されているが、さらに最近の演奏で、
エマニュエル・アックスの室内楽はお馴染みだが、
何とも柔らかい音色を聞かせて、躍動する音楽は
ますます素晴らしい。ブラームスを中心としながら
エマニュエル・アックスによる室内楽を続けて聞く。

RCO 17001

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2023年10月22日 (日)

ロベルト・ホル 1

ロベルト・ホルとロジャー・ヴィニョールズによる
シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」 D.957
秋 D.945、冬の夕べ D.938
2008年1月9-11日にロンドンのオール・セインツ教会。
バスの歌声でもっと重く、暗い色合いになるのではと
ついそう思ってしまうのだが、ロベルト・ホルの歌には
独特の暖かみがあって、むしろどこか明るいのである。
シューベルトの晩年の絶望感や諦めといった心境が、
色濃く反映された作品だが、優しく、包み込むように
これならば救われるに違いない。ロベルト・ホルには
そうした深さ、大きさが感じられて、昔から好きである。
歌曲ピアニストへの関心が高く、注目しているのだが、
ロベルト・ホルの歌声に夢中になるので、それだけの
力が歌に感じられるのである。シューベルトの歌曲は、
ピアノも重要だが、ロジャー・ヴィニョールズはここでも
歯切れのいい、スッキリとした表現で、軽さもあって、
その響きがこの世界観を作っているというのもある。
前半のレルシュタープの詩による歌曲の部分では、
まさに動きのいい流れが音楽に心地よさを与えて、
後半のハイネの詩による歌曲で重苦しい空気から
救い出してくれるこの感覚は、実に新鮮なのである。
それにしてもやはり歌曲集「白鳥の歌」は素晴らしい。

hyperion CDA67657

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2023年10月21日 (土)

スティーヴン・ハフ 23

スティーヴン・ハフによる「はかなき人生」で
バッハ(ブゾーニ編曲)のシャコンヌ
ショパンのピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35
リストの詩的で宗教的な調べ~葬送曲
調性のないバガテル
ブゾーニのカルメンによる室内幻想曲
ハフのピアノ・ソナタ 第4番「はかなき人生」
韓国民謡~アリラン(ハフ編曲)
グノーの瞑想曲「アヴェ・マリア」(ハフ編曲)
2018年12月10-14日にロンドンの殉教者聖サイラス教会。
自作のピアノ・ソナタ「はかなき人生」が演奏されて、
「葬送」や人生、生涯を感じさせる選曲であろうか。
ブゾーニ、ショパン、リストと魅力的な作品ばかりで、
スティーヴン・ハフのセンスって、本当に素晴らしい。
普遍的な曲目に見え、音楽は少し革新的でもある。
鮮やかなテクニックで、落ち着きのある表現であり、
スティーヴン・ハフの独特なクールな感覚であるが、
ブゾーニでもリストでもときに見せる巨大な響きで、
雄大なスケールを全開にするところでは感動する。
一方で調性のないバガテルやカルメン幻想曲での
歯切れよく、ホロヴィッツ的なヴィルトゥオーゾには
すっかり夢中になってしまった。後半は自作であり、
ピアノ・ソナタ 第4番も新しい響きと輝きを見せて、
しかし少しも難解なところはなく、親しみを感じて、
スティーヴン・ハフによる自作自演は注目である。
楽器はYAMAHAが使用されているが美しい音色。

hyperion CDA68260

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2023年10月20日 (金)

タカーチ四重奏団 11

タカーチ四重奏団による
スティーヴン・ハフの弦楽四重奏曲 第1番「6つの出会い」
デュティユーの夜はかくの如し
ラヴェルの弦楽四重奏曲 ヘ長調
2022年2月7-10日にローン・ツリー・アーツ・センター。
ピアニストとして、お馴染みのスティーヴン・ハフが、
タカーチ四重奏団のために作曲した弦楽四重奏曲で、
ラヴェルとデュティユーのこれらの弦楽四重奏曲と
同時に演奏することを想定した作品だそうである。
2021年12月8日に初演され、2ヶ月後の録音だ。
「6つの出会い」という、6楽章から構成されているが、
フランス6人組の作曲家にちなんで書かれており、
しかし引用があるわけではなく、むしろ作曲家たちの
音楽言語に欠けているものを探求したとのことである。
楽しい作品だ。どこか不安定に物憂げに続く旋律が
心地よくも感じられるのである。ハフはイギリス人だが、
デュティユーとラヴェルと合わせ、フランス音楽である。
1976年に完成したデュティユーの「夜はかくの如し」は
エベーヌ四重奏団に続いて、聞くのは2枚目なのだが、
前衛的な作風になり、夜の世界に深く引き込まれて、
暗黒の闇にはどこか恐怖感も漂い、実に素晴らしい。
鋭い緊張の響きに満ちているのだが、なぜかここでは
現代音楽の難解さはなく、そろそろ親しみも増してきた。
連続するようにラヴェルの弦楽四重奏曲に移るのだが、
時代も違い、響きも異なるけれど、ここでの調和であり、
大きな流れが生み出されているところには感動する。
デュティユーの張り詰めた暗黒の闇から解放されて、
ラヴェルの弦楽四重奏曲はただただ美しく澄み切り、
魅力の詰まった作品である。これは実にいい選曲で
普通はドビュッシーとラヴェルを組み合わせるところ、
タカーチ四重奏団は切り離し、その周辺に目を向け
フランクやデュティユーの作品が取り上げられたが、
世界は豊かに可能性も大きく広がって、最高である。
するとここで残されているのはフォーレの室内楽だ。
タカーチ四重奏団とアムランでぜひ録音してほしい。

hyperion CDA68400

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2023年10月19日 (木)

レナード・バーンスタイン 35

レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルによる
マーラーの交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
1966年10月4日にニューヨークのリンカーン・センター。
バーンスタインのニューヨーク・フィルとの最初の全集も
いよいよ後半である。ここで第1番に戻り、「巨人」だが、
バーンスタインの独特の雄大に歌い上げる感じであり、
しかしまだ、この時代の演奏では、緩急が付いており、
動き出すと加速もあり、先へと突き進む感じは明快で
感情の起伏やその変化がストレートに表現されている。
しかしその走り出すところがちょっと極端にも感じられ、
その点では、やはり晩年のバーンスタインの感覚が、
基本となって聞いているのか、こちらが基準ならば、
全く逆の形となり、晩年の演奏には苦労するであろう。
歌うところでは、これでもかと濃密な表情付けでもあり、
それは魅力ではあるのだが、後のバーンスタインは、
また少し違って、洗練されていった部分もあるのかと。
この時代はもっと人間臭いところもあって、大衆的で
俗っぽくもあり、精神性よりありのままの描写である。
自然も描かれるし、そこには人も動物も営みがあって、
リアルである。生々しい感覚は、極彩色にも感じられ、
現代の演奏は比べれば、すべてが洗練されている。
どちらがいいということでもなく、マーラーの音楽には
そうした要素が内在していて、どのような形で表現し、
伝えるか、それを感じるか、ということなのであろう。
時代の移り変わりで、この変化はたいへん興味深く、
マーラーの交響曲を鑑賞する最大の面白みともいえる。
それも踏まえて、晩年のバーンスタインのマーラーも
この辺でそろそろ聞き直してみたいと盛り上がってくる。

SONY 19439708562

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2023年10月18日 (水)

ジュゼッペ・シノーポリ 17

ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデンで
ベルクの7つの初期の歌曲(ユリアーネ・バンゼ)
アルテンベルク歌曲集 作品4(アレッサンドラ・マルク)
演奏会用アリア「ワイン」(デボラ・ヴォイト)
管弦楽のための3つの小品 作品6
1997年6,7,11月にドレスデン国立歌劇場で収録。
7つの初期の歌曲では、まさに世紀末ウィーンで
マーラー風の濃厚な世界にすっかり引き込まれるが、
アルテンベルク歌曲集になるとシノーポリの表現は、
前衛的な方向性も示して、鋭い感覚は冴えわたり、
しかし音楽はベルクなので親しみやすいのである。
ワインから後半の管弦楽のための3つの小品へと
やはりベルクの音楽が素晴らしい。大好きである。
シノーポリなので、音作りにおける色合いの出し方、
緻密に攻める表現の追及でも実に安心して聞けて、
とにかくこの世界観を堪能できる感覚が素晴らしい。
たっぷり鳴り響き、壮大な広がりも感じられるのだが、
後期ロマン派の濃縮された甘さにならないところは、
やはりそこにシノーポリが求め続けた独特の厳しさ、
鋭い切れ味、というものが存在しているのであろう。
ベルクの音楽に深く、深く入り込んで、浸った先に
この感動を与えてくれるのはシノーポリなのである。

Warner 0190295439576

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2023年10月17日 (火)

アンドリス・ネルソンス 3

アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団で
ブラームスの交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
2016年11月15,17-19日にボストン・シンフォニー・ホール、
交響曲 第4番 ホ短調 作品98
2016年11月18,19日にボストン・シンフォニー・ホール。
ネルソンスとボストン交響楽団によるブラームスの
後半を聞いているが、第3番に関しては、勢いよく、
快速な印象にはじまるのだけど、それは冒頭であり、
やはり旋律をたっぷりと歌わせ、木管楽器を中心に
豊かな表現が特長的である。ネルソンスといえば、
現在の世界の中心的存在といえる指揮者であるが、
その演奏はそれほどに最先端を目指すわけでなく、
普遍性に満ちているのであり、スタンダードであり、
じっくりと歌い上げるスタイルは、回顧的でもある。
といって、過去の模倣でもないし、個性は示され、
ネルソンスならではの魅力も感じるし、素晴らしい。
響きは新鮮な感覚にあふれているが、新しくはない。
ブラームスの音楽を聞くというのでは、濃密でもあり、
これが恐らく、現在の理想形ということなのであろう。
交響曲 第4番も深みある音色で美しく歌い込まれ、
ここでも管楽器はよく鳴り、よく聞こえ、独特である。
ボストン交響楽団が華美な感じはなく、渋い音色で
その中身で勝負しているのであり、それもたまらない。

BSO Classics 1701/03

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2023年10月16日 (月)

セミヨン・ビシュコフ 17

セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルによる
チャイコフスキーの交響曲 第4番 ヘ短調 作品36
2018年3月5-8日にプラハのルドルフィヌムで収録。
少しまた雰囲気も変わっており、雄大な音色を聞かせ、
独特の引き締まった感じよりもロシア色を濃厚に描き、
歌い上げようとしているのか、音楽に深く引き込まれる。
まさに感動を呼ぶ演奏であり、のめり込む感じがすごい。
ビシュコフとしては、ちょっとイメージと違う気もするが、
ゆったりとしたテンポ設定で丁寧に音楽を引き出して、
細やかな部分を精密に聞かせていくのはここでもだが、
派手な効果を狙わず、勢いで進めることもしないで、
表現を大切にして、このテンポ設定が出てきたのかと
それらがここでのビシュコフの特長であると思われる。
チェコ・フィルも明るい響きで深刻な音を聞かせない。
過度に色彩的なこともなく、落ち着きのある安定感か。
この交響曲全集も残すのは、第1番と第2番である。
その前にキリル・ゲルシュタインのピアノ協奏曲を聞く。

DECCA 483 4942

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2023年10月15日 (日)

エリック・ル・サージュ 4

エリック・ル・サージュによるシューマンで
蝶々 作品2
ダヴィッド同盟舞曲集 作品6
間奏曲 作品4
2005年8月にラ・ショー・ド・フォンで収録。
エリック・ル・サージュでシューマンを聞いている。
歯切れよく、粒立ちよく、勢いがあって、鮮やかに
香り立つような色合いの美しいシューマンである。
エリック・ル・サージュは、2005年8月に集中して、
CDで4枚分のシューマンの作品を録音しており、
ここでは初期の作品を集めているが、それもあり、
ますます新鮮な輝きである。音楽は実に若々しく、
エリック・ル・サージュの演奏は、極めて充実して、
音色にも深みが増してきているが、相乗効果で、
その絶妙なバランスの中で強い光を放っている。
このシューマンのシリーズはまだ聞きはじめだが、
先を熱心に聞いていこう。聞くと盛り上がってくる。

Alpha ALPHA813

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2023年10月14日 (土)

マルタ・アルゲリッチ 4

クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルと
マルタ・アルゲリッチによるチャイコフスキーで
ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
1994年12月にベルリンのフィルハーモニー、
アルゲリッチとニコラス・エコノムの2台ピアノで
「くるみ割り人形」組曲 作品71a(エコノム編曲)
1983年3月にミュンヘンのヘルクレスザール。
この時代、世界の中心にいたクラウディオ・アバドと
ベルリン・フィルだが、それを忘れさせるのだから
アルゲリッチの存在感はやはりすごいのである。
1970年のデュトワとの協演による最初の録音は
35分台であったが、1980年のコンドラシンとの
ミュンヘンでのライヴは32分台とかなり速くなり、
ここでも32分を切っているのではないかという、
激しく勢いの凄まじいアルゲリッチの演奏である。
天才的感覚をこれほどまでに感じることもないが、
ちょっと荒っぽくて、雑に聞こえてしまうことがあり、
緊張感あふれるライヴの魅力を受けとめながらも
この時期からハッキリとアルゲリッチという人が、
苦手になってしまったのである。そういいながらも
久しぶりに聞くとそのすごさは認めざるを得ずに、
自由に駆け回り、先の予測が全くできない独奏に
食らい付いていくアバドとベルリン・フィルがまた、
圧倒的迫力であって、忘れられない演奏である。

DG 449 816-2

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2023年10月13日 (金)

タカーチ四重奏団 10

タカーチ四重奏団とマルク・アンドレ・アムランで
フランクのピアノ五重奏曲 ヘ短調
ドビュッシーの弦楽四重奏曲 ト短調
2015年5月22-25日にワイアストン・エステイトで収録。
ピアノ五重奏曲でのアムランのピアノは感動的だ。
この演奏は素晴らしい。フランクのピアノ五重奏曲は
リヒテルの演奏で好きになって、いろいろな演奏を
これまで聞いてきたが、その中でも最高であると思う。
何とも深みのある音色で美しい色合いを醸し出して、
非常に緻密な表現を追求しながらも絶妙な揺らぎで
豊かな表情を生み出し、奥行きのある、この陰影は、
奇跡を感じさせる濃密な世界である。コントロールは
精密に徹底的なこだわりを見せながら、自由でもあり、
どうしてそれが両立できるのか、実に不思議であって、
アムランの神業であり、これぞ高みの境地であると思う。
もちろんタカーチ四重奏団も魅力的なのだが、後半は
ドビュッシーの弦楽四重奏曲という、喜びの選曲であり、
こちらがまた最高の名演である。無色透明の洗練だが、
この上ない明瞭な表現であり、音楽に明るさを与えて、
フランス風の雰囲気やセピア色の柔らかさはないかと
ふと気付くのだけれど、このくっきりとした景色がいい。
アムランもタカーチ四重奏団も昔から好きなのだが、
その中でも最高の一枚に出会えたという思いである。

hyperion CDA68061

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2023年10月12日 (木)

ジョナサン・ノット 6

ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団で
マーラーの交響曲 第4番 ト長調
モイカ・エルドマンのソプラノ独唱で
2006年12月18-22日にバンベルクのコンツェルトハレ。
ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団による
マーラーの交響曲全集を収録順に聞いている。
どこか控えめに繊細な印象のはじまり方ではあるが、
緩急は目まぐるしく変化して、その中で優しい表情の
穏やかな空気だけではなく、ヒステリックな激しさも
突如として現れるのであり、折衷的な作風を強調し、
マーラーの綿密な指示に細かく対応しているのだと
実に面白い。刺激的な展開にはすっかり夢中だが、
天国的な平穏で安らかにも受け取れる交響曲が、
最新鋭の現代的な彩りで過激さを発揮していると
やはりジョナサン・ノットの解釈には目が離せない。
しかしひとついえるのは、奇を衒った解釈ではなく、
マーラーの緻密な音楽をこの上なく丁寧に再現して、
そこにはしっかりとした説得力が存在していること、
変わった演奏とは思ってほしくなくて、これがいい。
すべてがこうなるとも思えないが、こういう演奏が
存在していいのである。マーラーを鑑賞する上で
最高のスパイスであり、リセットにはこれがいい。
前半との対比かもしれないが、第3楽章以降は
その天国的な安らぎが増す傾向なのは美しく、
しかしすべてがそうともいえなくて、起伏はあり、
この交響曲 第4番は素晴らしい。正解だと思う。

TUDOR 1670

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2023年10月11日 (水)

セミヨン・ビシュコフ 16

セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルによる
チャイコフスキーの交響曲 第5番 ホ短調 作品64
2017年12月11-14日にプラハのルドルフィヌム。
ビシュコフの交響曲 第5番は、ウィーン・フィルとの
ライヴ録音を聞いたこともあって、よいイメージがあり、
ここでも力強く、引き締まった表現を聞かせながら、
チェコ・フィルは独特の華麗さで、のびやかに歌い、
それらがブレンドされた絶妙な調和には感動する。
音楽はしなやかにますます自在な表情を生み出し、
ロシア的な雄大な広がりと一方の繊細な表現とが、
見事に両立されているのは、最大の魅力といえる。
でもやはりチェコ・フィルだと細やかな部分の方が
際立つ傾向にはあり、力で押し切る感じではなくて、
ファンにはたまらないのだが、豪快ではないと思う。
終楽章の後半も爽快に駆け抜ける感じは快適だ。

DECCA 483 4942

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2023年10月10日 (火)

10月10日の感想

春の花粉は大丈夫なのだけど、秋はダメで、
今年も先週から調子が悪かったのだが、
気温差も体に堪えて、風邪のような症状に。
鼻水が出れば、鼻をかめばいいのだが、
深刻な鼻詰まりで一日、ボーっとしている。
念のため風邪薬も飲んだが、効かないので、
風邪ではなくアレルギー症状なのだと思う。
思考能力が落ちているので大人しくします。

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2023年10月 9日 (月)

ウラディーミル・ユロフスキ 6

ウラディーミル・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルで
ベートーヴェンの交響曲 第3番 変ホ長調 作品55
2014年1月22日にロイヤル・フェスティバル・ホール、
「フィデリオ」序曲 作品72
2015年9月3,4日にロイヤル・アルバート・ホール。
速いテンポで音楽は前に進み、力強くリズムを刻み、
この生々しい感覚というのが最大の特長であろうと
古典的な軽やかさはなく、真剣そのものなのである。
ピリオド奏法も取り入れられているが、そうした手法、
表面的な効果よりも中身で勝負して、様式や形態は
伝達手段にすぎず、後から気にするに過ぎないのだ。
リアルな感触は実に圧倒的なのであり、ユロフスキの
独特の迫ってくる迫力は最高の魅力ではあるのだが、
このスタイルは21世紀、現代の主流ではあるけれど、
どうも深みが感じられない気もしてしまう。以前は違い、
こうした解釈が出てきたときには、本当に目から鱗で
これこそがベートーヴェンであると惹かれたのだが、
それにも飽きが来たのであろうか。深みが欲しい。
厚みのある響き、奥行きの感じられる音色である。
それにしてもユロフスキの明確な表現は素晴らしく、
主張もハッキリとして、この方向性に間違いはなく、
ベートーヴェンの交響曲全集に取り組んでほしい。
でもこの解釈では、もはや新しさは感じられなくて、
ユロフスキならば、さらなる進化を求めてしまう。
ベーレンライター版の新校訂が登場して、25年か、
それぐらいになると思うのだが、古楽器だけでなく、
ピリオド奏法も現在では当たり前になっているが、
この流れもそろそろ終わりを迎えるかもしれない。
ユロフスキが、これだけのキレキレの演奏をして、
それにときめかなくなったら時代は変わると思う。

LPO 0096

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2023年10月 8日 (日)

ニコラ・アンゲリッシュ 3

ニコラ・アンゲリッシュによるブラームスで
ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8
ピアノ三重奏曲 第2番 ハ長調 作品87
ピアノ三重奏曲 第3番 ハ短調 作品101
ルノー・カピュソンとゴーティエ・カピュソンとの共演で
2003年12月20-22日にシャンベリー芸術センター。
ニコラ・アンゲリッシュはカピュソン兄弟と共演して、
ブラームスの室内楽にも熱心に取り組んだのだが、
その最初の録音である。ルノー・カピュソンは27歳、
ゴーティエ・カピュソンは22歳という若さなのであり、
ここで年長のニコラ・アンゲリッシュも33歳である。
演奏もまた瑞々しいのであり、実に柔らかい音色で
自然体な表情は魅力である。若い演奏家たちなのに
角張ったところがなく、まさに室内楽の空気感であり、
穏やかな世界は心地よいのである。ブラームスの
独特の厳めしいような雰囲気は感じられず、それが
いつの間にか伝統であり、そこから脱して、新鮮に
音楽に向き合っているところが、むしろ若さなのか、
それにしても細やかに丁寧に音楽を表現している。
ひとつ特長なのは、スケルツォの楽章ではあえて、
鮮やかにメリハリを効かせ、技巧の冴えを発揮し、
駆け抜ける感覚というのは、爽快にも感じられた。
ブラームスの渋くも美しい室内楽を堪能できる。

ERATO 0190295869212

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2023年10月 7日 (土)

ミシェル・ダルベルト 18

ミシェル・ダルベルトによるブラームスで
4つのバラード 作品10
6つの小品 作品118
1982年12月にパリのサル・アドヤールで収録、
3つの間奏曲 作品117
1987年5月にパリのサル・アドヤールで収録。
若き日のミシェル・ダルベルトによるブラームスで
鮮やかな切れ味で鋭く響き、この力強い表現は、
リスト的な方向性を示しているが、バラードでは、
ブラームスの若々しい繊細な心情を歌い上げ、
やはり素晴らしい音楽なのである。渋い晩年の
ブラームスの作風がいいと思ってしまうけれど、
ピアノの作品には初期の傑作が多く存在して、
ミシェル・ダルベルトはその魅力が全開である。
すると一方の後期の作品ではどうなるかだが、
6つの小品 作品118がバラードと同じ録音で
若々しい感覚に引き寄せられた演奏であるが、
3つの間奏曲 作品117は少し時間が経過して、
1987年に録音されており、そこではさりげなく、
さらに力は抜け、押し切るところはなくなって、
強固に引き締まった感覚というのは薄れるが、
表現は自由になって、幻想性が増すのである。
細やかな表情の動きは、実に感動的なのであり、
それから40年で、近年は再録音も進めている、
ミシェル・ダルベルトだが、ブラームスは期待だ。
若い感受性によるブラームスも魅力的だけど、
今日の円熟の演奏は、素晴らしいに違いない。

ERATO 0190295612085

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2023年10月 6日 (金)

タカーチ四重奏団 9

タカーチ四重奏団によるショスタコーヴィチで
弦楽四重奏曲 第2番 イ長調 作品68
マルク・アンドレ・アムランのピアノで
ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57
2014年5月14-17日にワイアストン・エステイトで収録。
弦楽四重奏曲 第2番だが、ショスタコーヴィチでは
わかりやすい曲調で、初期の作品というわけではなく、
しかしその親しみやすそうに見えて、そう単純でもなく、
表の見え方と裏の世界が共存しているのは、独特の
高度な作曲技法と複雑な事情によるものなのであろう。
やはりそこは深い内容を含み、簡単には聞き取れない。
ピアノ五重奏曲は、リヒテルの時代から長く聞いてきたし、
アシュケナージの演奏もあって、最近は録音も増えたが、
アムランとタカーチ四重奏団ならば、やはり注目である。
こういう作品だとアムランも超絶技巧の華麗な芸風を
披露する場面というのは少ないが、音楽の深い音色に
耳を傾け、それをしっかりと受け止め、表面的ではない、
ショスタコーヴィチの音楽を堪能して、そこに感動がある。
こんなにもアムランの存在を意識せずに集中することも
珍しいのだが、それは音楽との同化によるものである。
とはいってみたが、スケルツォ楽章での鮮やかさなど、
やはり切れ味が鋭く、さすがにアムランとも思わせる。

hyperion CDA67987

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2023年10月 5日 (木)

パトリシア・コパチンスカヤ 1

パトリシア・コパチンスカヤとファジル・サイによる
ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタ
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108
バルトークのヴァイオリン・ソナタ 第1番
2022年8月にベルリンのテルデックス・スタジオ。
コパチンスカヤとファジル・サイの強烈デュオだが、
凝った選曲による独特な世界観は実に魅力的だ。
ハンガリー色の強い作品にヤナーチェクを加えて、
コパチンスカヤは鋭く刺激的に民族色を表現して、
極端な個性を発揮しつつ鮮やかに聞かせている。
ファジル・サイもそこで一緒に爆発していそうだが、
意外に違って、大人の対応であり、実にしなやかで
力で押さないバランスの取れた演奏を行っている。
近年のファジル・サイはこの方向性といえるのか、
型破りなところは見られない。柔軟で角が取れて、
自在に聞かせる音楽は、深い熟成が顕著である。
コパチンスカヤの天才的な感覚に立ち向かうのは、
戦場の緊迫感を思わせるけれど、ファジル・サイは
それも楽しみ、すべて飲み込んでしまっているような、
不思議な大きさが備わっている。キリキリと斬り込む
コパチンスカヤとの対比で音楽の色合いを豊かに
この雰囲気を演出しているのもファジル・サイである。
現在のファジル・サイは、かなり丸みを帯びている。
似ている二人だが、やはりそれぞれに個性があって、
才能は発揮されれば、それぞれの方向性を示して、
ぶつかり合う場面もありそうだけど、すると歩み寄り、
寄り添っては離れ、その調和というのは思う以上に
美しいのである。繊細な部分こそ、聞いていきたい。

ALPHA 885

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2023年10月 4日 (水)

クリスティアン・ティーレマン 11

クリスティアン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンで
ワーグナーの楽劇「神々の黄昏」序幕から
夜明けとジークフリートのラインへの旅
第3幕からジークフリートの葬送行進曲
ブリュンヒルデの自己犠牲
2021年10月31日にザルツブルク祝祭大劇場で収録。
管弦楽による夜明けの場面からラインへの旅へと
強引につなぎ合わせている演奏もたまにあるのだが、
ティーレマンはさすがに楽劇の流れをよく心得ており、
ごく自然な形で音楽を展開させ、少しの違和感もなく、
そのまま静かにジークフリートの死から葬送行進曲へ
管弦楽の名場面というよりも「神々の黄昏」の物語が
きちんと心に響いてきて、これは素晴らしいのである。
「ブリュンヒルデの自己犠牲」では、アニヤ・カンペが
ここでも再び登場して、前半はジークリンデを歌って、
後半はブリュンヒルデを歌い、見事に演じ分けている。
ステファン・グールドもジークフリート、ジークムント、
それだけでなくて、「ラインの黄金」ではローゲも歌い、
「指環」の4部作を制覇したそうだけど、こちらもまた
二役をこなして、活躍である。「指環」の物語を一夜で
2時間で聞かせる演出だが、非常に上手く行っている。
やはりティーレマンは、この「神々の黄昏」においても
実に力が抜けている印象であり、自然な音色である。
強引なところがなくなり、すると豪快さも消えていくが、
音楽は解放されて、より遠く彼方へと鳴り響いていく。
自在にコントロールする技を手にして、研きがかかり、
この感覚で「ニーベルングの指環」の全曲というのを
聞いてみたくなってくる。それを聞けるのは、これから
ベルリン国立歌劇場なのかもしれない。ということで
新しい時代のティーレマンに期待が集まるのである。
ブリュンヒルデが愛馬とともに燃え盛る炎に飛び込み、
管弦楽のみの壮大なフィナーレとなるが、鳴りやんで、
ティーレマンが棒を降ろすまでの時間、長い沈黙で、
ブルックナーならば、その余韻に浸ることは重要だが、
音で聞いているとここで一体、何が起きているのか、
やはりティーレマンは独特の間を創造するのである。
ラインの大洪水が起こり、指環は乙女たちの元へと
フィナーレのところでも独特の長いパウゼが存在して、
そこについては、ティーレマンは昔からであるのだが、
パウゼについても研きがかかってきているのであろう。
ワーグナーの音楽において、ティーレマンの音作りは、
確実に美しくなっており、その輝きはさらに増している。
音楽は上演を重ねるたびに引き締まる傾向にあるが、
同時にその深みは雄大さを増す一方で、その共存を
ティーレマンは魔法のように、なしえているのである。
拍手が鳴り出し、ここでも6分ほどの時間がそのまま
収録されている。その空間の共有は、最高の喜びだ。

Profil PH22038

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2023年10月 3日 (火)

クリスティアン・ティーレマン 10

クリスティアン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンで
ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」から第1幕
2021年10月31日にザルツブルク祝祭大劇場で収録。
ザルツブルク復活祭音楽祭2021のライヴ録音だが、
4月に予定されていた音楽祭は、コロナ禍のために
秋に変更され、規模を縮小して開催されたそうである。
シュターツカペレ・ドレスデンによる「指環」の演奏会で
前半の楽劇「ワルキューレ」から第1幕を聞いている。
演奏会形式であり、アニヤ・カンペのジークリンデ、
ルネ・パーペのフンディング、そしてジークムントは、
先日(2023年9月19日)、癌で亡くなってしまった
ステファン・グールドが歌っている。コロナ禍からの
復活である、この重要な演奏にも出演していたが、
現代の最高のワーグナー歌手であった。しっかりと
ここでのジークムントも噛みしめて聞いていきたい。
ティーレマンの指揮がまた変わってきているようで、
テンポもゆったりとしているが、前半の嵐の場面でも
荒々しさはすっかり消えて、押しまくる感じもないし、
力が抜けてきている。ますますしなやかになって、
表現には柔らかい表情も生まれて、この透明感で
響きも明度が増している。少し驚きではあるのだが、
しかしティーレマンの方向性は、この感じであろう。
強引なところはどこにもないし、圧倒する感覚は、
壮大な音楽からも消えてなくなって、室内楽的に
洗練された感覚を手に入れている。この変化は、
ティーレマンの中で何かが起きているのであろう。
これまでの演奏も捨てられずに偉大であったし、
この演奏もまた、新しい世界が開け、感動である。
演奏は61分ほどだが、その後に5分間の拍手で
聴衆の反応が盛大に収録されており、共感が増す。
続いて、後半の「神々の黄昏」から聞いていきたい。

Profil PH22038

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2023年10月 2日 (月)

エリック・ニールセン 1

エリック・ニールセン指揮フランクフルト歌劇場で
アリベルト・ライマンの歌劇「メデア」
2010年9,10月にフランクフルト歌劇場で収録。
ドイツの巨匠アリベルト・ライマンの歌劇「メデア」は、
2010年春にウィーン国立歌劇場で初演が行われ、
こちらはそれから半年、フランクフルト歌劇場での
初演の録音だそうである。現代オペラではあるが、
現代音楽の難解さはここには存在せず、親しめる。
新作なので、なかなか情報は集まらないのだが、
原作は「金羊毛皮」という作品で、オーストリアの
19世紀の詩人フランツ・グリルパルツァーの作と
そういう記述を見つけた。そこから戯曲を調べると
ギリシャ伝説から題材をとり、英雄のヤーゾンは、
金羊毛皮を奪還するため、コルヒスを目指して、
そこで王と王子を殺害し、金羊毛皮を手に入れ、
王女メディアを妻にする。野蛮人を妻としたため
ギリシャでは受け入れられず、ヤーゾンの心も
しだいにメディアから離れ、かつての許婚者の
クレウーザに気持ちは移り、子供にも背かれ、
メディアは夫と子供を殺害するという話だとか。
原作は古いが、現代オペラが取り上げそうな、
複雑な心理劇であることが推察されるけれど、
明快な響きによる音楽のわかりやすさもあるし、
やはり何よりもこの力強い物語が、観客たちを
惹きつけて、釘付けにしたのであろう。初演は、
話題になったそうで、現代の傑作オペラである。
ウィーン初演での情報を読むとイアーソンとあり、
魔女のメデアは彼に一目惚れして、父を裏切り、
金羊毛皮を奪う手助けをする。メデアは異国で
母国への想いや過去を断ち切り、イアーソンに
仕えるが、そのイアーソンも王の娘クロイサとの
結婚を決め、メデアは国外追放の処分を受ける。
復讐するメデアは、王とクロイサの城に火をかけ、
手放す自身の子供も手にかけると解説がある。
恐ろしい物語だが、オペラとしては面白そうだ。
想像しながら聞くとアリベルト・ライマンの音楽は
ますます素晴らしい。実に魅力的な作品である。

OEHMS OC955

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2023年10月 1日 (日)

アンドリス・ネルソンス 2

アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団で
ブラームスの交響曲 第1番 ハ短調 作品68
2016年11月8-10日にボストン・シンフォニー・ホール、
交響曲 第2番 ニ長調 作品73
2016年11月11,12日にボストン・シンフォニー・ホール。
たっぷりとゆったりとブラームスの音楽を堪能できる。
ネルソンスは21世紀のまさにいま、最先端の人だが、
その音楽は伝統を大切にし、普遍性の強く感じられる、
そうしたブラームスである。角を作らず、丸みを帯びて、
深い味わいと豊かな色合いでは、この上なく感動的だ。
1990年代のロマン派の作品へのピリオド奏法の導入や
2000年以降もそれを根底にかなり解釈も変わっており、
時代の流行というのは、たしかに存在しているけれど、
ネルソンスはそうしたものには流されず、形ではなく、
自分の中にあるものをしっかりと守り、心で表現して、
それが広く世界の人に受け入れられているのであろう。
何か新しい発見に喜びを見出す感じではないのだが、
どこか懐かしさを感じ、穏やかに安心できるのであり、
昔から知っている大切な音楽を最新の演奏で聞いて、
その辺りがネルソンスの存在なのかと思うのである。
交響曲 第1番に比べ、第2番の方が作品も自由に
どこか解放された空気が感じられるが、ネルソンスも
表現に幅が生まれて、ますます心地よいのである。

BSO Classics 1701/03

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