2018年7月13日 (金)

第292回 柳家小満んの会

13日で小満んの会である。夕方から日本橋へ。
横須賀線で新日本橋へ行ったが、電車を降りて、
駅構内は暑いし、地上へ上がってくるとさらに暑く、
この蒸し暑い空気で、それでなくても体力消耗。

春風亭朝七:牛ほめ
柳家小満ん:浮世床
柳家小満ん:化物娘
柳家小満ん:涼み船

小満ん師匠の「浮世床」を聞くのは、今回がはじめてで、
寄席版とは違って、いろいろな挿入もあって、本と夢の間に
将棋の場面があり、駒の進め方で差しながら洒落をいい合う。
夢の後、髪結の親方が、代金を置かずに帰った者がいると。
畳屋の職人だから、とってきてやるということになるのだが、
「畳屋だけに床を踏みに来た」というオチ。畳の芯が畳床で、
藁やら土を踏み固めて作るのであり、畳屋の用語としては
イメージできるのだが、「床を踏む」で調べてみたのだが、
よくわからなかった。「太閤記」を読み上げる本の部分は、
くどくてしつこく、あまり好きじゃないのだが、でもなぜか?
小満ん師匠だと不思議に素直に笑えた。つかえて先に
進めないというのではなくて、読み違えて、間違えている、
音が異なると意味まで違ってきて、そうした言葉遊び的な
もって行き方なので、そこが重要なのかも。しつこくって、
もういいと不愉快になってくるのは、吃音的な演り方だ。
「化物娘」は、「本所の七不思議」のひとつだそうである。
実は行く前にちょっと検索してみたら、あらすじが出てきて、
つい読んでしまったものだから、話をしっかりなぞって聞いて、
年頃の娘さんを化物扱いするという、とんでもない噺ながら、
面白くて、大いに笑ってしまった。了見が問われてしまう。
禽語楼小さんというから明治前半の二代目の小さんだが、
速記(百花園)が残っていると書いてあって、近いところでは
志ん生師匠の録音が残されているらしい。帰ってきてから、
改めて落語事典で調べてみたのが掲載はなく、どことなく
圓生師匠の「遠山政談」に似ているのだが、それは別の噺。
「涼み船」は「汲みたて」である。しかしそこはサゲが違って、
「糞でも食らえ!」「食ってやるから持ってこい!」と船と船で
いい争っているところに肥船が一艘、抜けていくのではなく、
熊さんだったか、風呂上がりに師匠のところで一杯飲みたい、
刺身が食いたいと、なのに煙草まみれの湿気た塩煎餅を
食わされたものだから、食い物の恨みは恐ろしいのであり、
師匠と栄さんの船に飛び移ってきて、殴りかかると思いきや
「一杯飲ましてくれ!」と頼み込むオチ。抜け駆けをして、
師匠といい仲になった栄治を袋叩きにしてやろうという
なんとも物騒な展開なのだが、そういう嫌な雰囲気はなくて、
ただ陽気に楽しい印象なのは、小満ん師匠の工夫であろう。
肥船の「汲みたて」が出てこないので、よって題名も変わり、
「棚卸し」の際に「囃子船」の題名で演じられていたのだが、
その後、三遊亭圓右の公演記録に「涼み船」を見付けて、
内容は不明ながら、師匠はその題名が気に入られたそうで
今後は「涼み船」で演じてみたいとお聞きしたことがあった。
今回は「浮世床」と「涼み船」と仲間がワイワイ盛り上がり、
夏のノリでドタバタ騒動も沸き起こるものだから、より一層、
楽しく、笑って、なんとも心地のよい小満んの会であった。
ということで、来週19日の木曜日が横浜での小満んの会、
「道具屋」「麻のれん」「付き馬」の三席である。楽しみだ。

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2018年5月17日 (木)

第145回 柳家小満んの会

13日の日本橋に続いて、横浜での小満んの会。
今回は中三日だ。夕方から吉野町へ。暑かった。

林家彦星:道具屋
柳家小満ん:出来心
柳家小満ん:鍬潟
柳家小満ん:茶の湯

「出来心」は、師匠も寄席でよく掛けていると思うけど、
小満ん師匠でこの噺を聞くのは、今回がはじめてだ。
普段の寄席版と違って、後半の「花色木綿」までであり、
題名の「ほんの出来心でございます」の言い訳もあり。
「花色木綿」の部分は久しぶりに聞いたが、大家さんの
事情聴取で盗難届のやり取りは面白い。なんでも裏は
花色木綿になってしまうのである。どうしてこう、物事が
わからないのだろう…って、思ってしまうけど、そこが
落語の登場人物としては典型的で、つい笑ってしまう。
前半、主役であった泥棒が、後半には台所の床下に
隠れてしまって、すっかり脇役に消えてしまうところが、
展開としては惜しいところだが、これって、落語では
よくあることで、その点では、前半のみの寄席版って、
まとまっているし、聞きやすい。羊羹を喉に詰まらせ、
名前を聞いて、逃げ帰ってくるけれど、下駄を忘れる。
続いて「鍬潟」、小満ん師匠でしか聞いたことがないが、
これまで何度か聞いているので、はじめて聞いたときの
この噺は何だろう?一体、どういう話なのだろう…という
探りながらに比べて、ずいぶん楽しめるようになったし、
小さい鍬潟が大関の雷電と義兄弟の契りを交わす話、
その辺は真面目にいい話で、じっくりと聞いて味わいだ。
地味な印象もあるけれど、三席の中では、いいバランス。
そして最後にたっぷりと「茶の湯」である。40分超だった。
小満ん師匠は江戸千家だったか?お茶の心得があって、
茶事について、しっかりと説明があって、様子を知って、
その上で、噺の中ではわざわざ作法がぶち壊されるので、
やはりその辺は、結果、印象も変わってくると独特である。
しっかりと流儀の確立されている茶道のイメージに対して、
滅茶苦茶なお茶を入れて、不味く、とんでもない一口を
吹き出しそうになりながら、風流だな~って、実にいい。
ご隠居さんと小僧の定吉のやり取りがほとんどだが、
一方の粗っぽい豆腐屋の親方と鳶の頭、登場人物も多く、
場面のメリハリもくっきりと変化があって、面白かった。
ということで、次回は7月19日(木)の第146回であり、
「道具屋」「麻のれん」「付き馬」の三席である。楽しみだ。

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2018年5月13日 (日)

第291回 柳家小満んの会

日曜日開催の小満んの会だが、生憎の雨だ。
小降りになるのを待ったけど、一向に弱まらず、
びしょ濡れで出掛けて、横須賀線で新日本橋へ。
帰りは横浜まで戻ってくるとすっかりやんでいた。

橘家かな文:のめる
柳家小満ん:薙刀傷
柳家小満ん:甲府い
柳家小満ん:へっつい幽霊

「薙刀傷」は、もちろんはじめて聞いたが、
師匠も聞いたことがないそうで、ということは、
つまり古い速記から起こした噺なのであろう。
演題からすると講談なのかと思っていたら
そうでもないようで、いかにも落語っぽくて、
医者でも見抜けなかった若旦那の恋煩いを
番頭さんが気付いて、長屋の奥の浪人宅へ
娘をもらいに行くのだが、そこで四苦八苦する。
その場面がこの噺の面白さではあるけれど、
念願叶って、嫁に迎え入れ、ここから先が
オチに関わるところだが、三人の盗賊が入り、
嫁が薙刀で賊に斬り付け、見事に撃退する。
桃栗三年、柿八年、柚子は九年で成り下がる
というのを、股を三寸くり貫き、だったか?
肩に八寸斬り付けた?、指は腱が切れて、
ぶら下がり…というような駄洒落のオチで
正確なところは思い出せないが、そんな噺。
「甲府い」は関内の小満んの会で聞いたと
確認してみると2015年11月の会であった。
小満ん師匠のは、店の旦那が、昔話をして、
食えなくてひもじい思いをしたことがあり、
オカラを食べるなんて、よっぽどの苦労が
あるのだろうと同じ境遇の縁で雇ってやる。
もちろん法華信者のよしみもあるのだが、
その辺って、他では聞いたことがないようで
私が短い「甲府い」ばかりを聞いているのか?
ちょっと違った仕上がりは小満ん師匠ならでは。
師匠の「へっつい幽霊」も何度か聞いているが、
前のは小さん師匠の録音も残っている短縮版。
どういうのかというと若旦那が出てこない形で、
すぐに博打になってしまう。今日は三木助型で
若旦那の銀之助さん(銀ちゃん)が活躍する。
幽霊と博打をする熊さんだが、兄ぃというよりは
親分の迫力で、それに怯える幽霊が可笑しい。
博打で出た目は四五の半。左官の長兵衛さんは、
長さんだけに四四(四ぞろ)の「丁」が好きらしい。
ということで、木曜日の17日が横浜の小満んの会、
演目は「出来心」「鍬潟」「茶の湯」の三席である。

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2018年3月19日 (月)

第144回 柳家小満んの会

県庁に年次報告書を出しに行って、
大岡川沿いに桜の開花を観測しつつ、
吉野町までのんびりと夜は小満んの会。

柳家小多け:つる
柳家小満ん:家見舞
柳家小満ん:お茶汲み
柳家小満ん:花見の仇討

お馴染みの「家見舞」だが、師匠で聞くのははじめて。
夏の噺で、少々臭ってくるようなイメージがあるけれど、
今日は、水瓶の礼に出された料理が芝海老の汁物で、
豆腐と青物の「緑があって、色がいいや」という台詞で
そういうところに春が感じられた。芝海老というので、
春なのかはわからないが、冬から三月の今頃が旬。
笑い所はたくさんだし、ドタバタ要素もある楽しさだが、
汚くならない言葉の運びが小満ん師匠ならではである。
続いて、「お茶汲み」であり、長大なオウム返しだが、
花魁が来て、男がギャーっというのはなんとも笑える。
こういうところがまさに落語的バカバカしいお笑いだが、
前半の男の顔を見ての花魁の驚き様もわざとらしくて、
騙して、騙されて、騙されたふりもして、すべてが遊び、
軽く聞かなくてはならない。真剣なものでないのであり、
わかった上でのいい加減さ、それが遊びというものか。
お茶殻の涙を介して、ウソを楽しむ粋な世界である。
三席目は「花見の仇討」で、2012年3月の関内以来。
その間に2016年3月にも日本橋で演じられているが、
そのときは行けなかったので、6年になるとは驚きだ。
師匠の「花見の仇討」は、もっと最近のような気もした。
花見のご趣向でまさに茶番だが、稽古からして面白い。
この噺は好きである。もちろん今年ははじめてだけど、
聞けるとうれしくなって、先週は、「百年目」も聞けたし、
今日も桜で花見を堪能した気分。吉野町への大岡川で
開いたばかりの桜も見てきたし、テンションが上がった。
ということで、次回は5月17日(木)の第145回であり、
「出来心」「鍬潟」「茶の湯」の三席である。楽しみだ。

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2018年3月13日 (火)

第290回 柳家小満んの会

今月も13日の小満んの会で夕方から日本橋へ。
横須賀線で急いで新日本橋まで。汗ばむ暖かさ。

柳家小多け:真田小僧
柳家小満ん:泣き塩
柳家小満ん:道具の意地
柳家小満ん:百年目

「泣き塩」は「在庫棚卸し(2014)」で聞いて以来だが、
今回は筋も知っていて、すると場面ごとの滑稽ぶりに
思わず笑ってしまった。というのは、若侍の悔し涙や
塩屋の爺さんの涙脆さが、少々臭いところもあって、
そこが面白さなのである。それを眺めている野次馬で
江戸っ子の早合点がすべての間違いの元なのだが、
こうしたいい加減なやり取りは、度々登場してくるので、
きっと江戸っ子らしい特徴なのであろう。江戸の風景だ。
知られている岡鬼太郎作の「意地くらべ」とは別なのだが、
道具の「意地くらべ」があると師匠から聞いたことがあって、
思い出されたが、それが今日のこの噺だ。四代目圓喬の
速記が残されており、お菓子の話題にはじまり、この辺は
名人圓喬もまた、明治の頃の名菓子を紹介するマクラだと
それからお茶の話題になり、茶事の様子も面白おかしく、
噺に入り、菓子とお茶に共通の道具の話になるのである。
耳の遠い旦那が、道具屋の持ってきた十五両の茶碗を
十両で買うと困らせて、年寄りの頑固、意地っ張りだが、
実はすっかり聞こえているようでもあり、足りない五両は
負け賃として、別に用意しているという、ちょっとした遊び。
騒動が店の方にも聞こえてきたものだから、見かねて、
若旦那はこっそりと道具屋に五両を渡す。それが余計で
道具屋も意地で返そうとするが、貰っておきなというのに
今度のために取っておいてくださいというのがオチである。
そして「百年目」だが、流れがよくて、台詞もコンパクト、
大ネタの長い印象を感じさせない、スッキリとした展開だ。
堅物で小言を連発するやかましい番頭さんはいかにもだが、
旦那は細かく帳簿を確認したりせずに、そこは、昨晩、
実は確認したのかもしれないけれど、それにはふれずに
むしろ番頭さんの粋な心得のあることにすっかり安心して、
心置きなく暖簾分けができると別居が決まるのである。
よって旦那のお説教もシンプルであり、天竺の栴檀の話も
番頭さんへのはなむけの言葉になっていた。もっと練って、
言葉も増えると当然、時間的にも長くなってくるのだが、
逆に今日の展開だと寄席のトリでも行けそうな感じである。
「道具の意地」でも話題に上っていたが、長命寺の桜餅を
旦那が向島で土産に買ってきたようで、翌朝の場面では、
番頭さんのお茶請けに桜餅が振る舞われていた。春だ。
ということで、来週の月曜日、19日は横浜の小満んの会、
演目は「家見舞」「お茶汲み」「花見の仇討」の三席である。

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2018年2月25日 (日)

武蔵野で小満ん・小里ん

朝日新聞夕刊の募集に申し込んでおいたら
小満ん師匠と小里ん師匠の二人会に当たった。
東京駅から中央線快速で30分ほど、三鷹まで
武蔵野芸能劇場のむさしの落語会に行ってきた。

柳家小多け:つる
柳家小満ん:鴻池の犬
柳家小里ん:一人酒盛
柳家小里ん:悋気の独楽
柳家小満ん:小言幸兵衛

小満ん師匠の一席目は犬猫のマクラから「鴻池の犬」。
昨日は大阪に行かれていたそうで、大阪にちなんで
今橋二丁目の鴻池の噺であり、きっと演ったのだろうと
情報を探してみたのだが、ところがそうでもなさそうで
「粗忽長屋」「雪とん」「按摩の炬燵」の三席だったようで、
大阪に行ってきて、それがきっかけで思い付いた噺かも。
師匠の「鴻池の犬」は、震災の年だったから2011年に
横浜の小満んの会で演じられていて、それ以来だが、
私は好きである。鴻池の門前で、黒犬の太い鳴き声と
末っ子の白犬のキャンキャンした鳴き声がやり取りして、
そこからアテレコがはじまるというのが、お気に入りだ。
小里ん師匠は酒飲みに関するマクラから「一人酒盛」。
素晴らしかった。五代目小さんの「一人酒盛」を継承で
まさに柳家のスタイルだけど、五合の酒、茶碗に五杯を
いろいろと喋りながらすっかり飲んでしまう。騙される。
褒めたり、怒ったり、雑談をしてみたり、煙に巻かれて、
そこに次第に酔っぱらっていく様子が加わるのだけど、
流れが自然で小里ん師匠は見事。これは宝物の一席。
仲入り後の小里ん師匠は、軽やかに「悋気の独楽」。
有名な噺で演じる人は多いけれど、小里ん師匠では、
何となく珍しい印象だ。私が知らないだけだろうけど。
軽やかに感じられた訳は、定吉の立ち回りである。
言葉も振る舞いも巧妙。それに比べて、おかみさんは
骨太な印象で、見た目も太っちょか?威圧感がある。
神経質にキリキリした感じではない。定吉の報告で
お妾さんの方も丸ぽちゃっとした印象だそうなので、
どうやらこの旦那は、そういうお方が好みのようだ。
最後は小満ん師匠のお馴染み「小言幸兵衛」である。
威勢のいい豆腐屋にはじまって、丁寧な仕立て屋さん、
さらに乱暴な花火屋さんでいつもの三人登場の展開。
師匠の幸兵衛さんは、駄洒落たっぷりの小言であり、
皮肉っぽくないのがいい。それが文楽流なのであろう。
横の婆さんも言っているが、これではいつになっても
借り手が付かない。というより、いま住んでいる人は、
どうやって気に入られて、入ることができたのか?
なんてことを考えつつ、実に楽しい二人会だった。
小満ん師匠も小里ん師匠とは演りやすそうであり、
会の仕上がりや空気の中にそれが伝わってくる。

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2018年2月20日 (火)

柳家小満ん 夜会

小満ん夜会で夕方から人形町に行ってきた。

春風亭一花:やかん
柳家小満ん:うどんや
三笑亭茶楽:芝浜
柳家小満ん:雪とん

小満ん師匠の一席目はお馴染みの「うどんや」で
忠実に柳家の「うどんや」であり、特別な演出は
あえて加えていないと思うのだが、気付いたのは、
「鍋焼きうどん」の売り声に子供が寝たばかりだと
怒られる場面、「新道に入(へえ)ってみるかな」と
そういう台詞があって、毎回そうらしいのだけど、
なぜか今日はそれが耳に入ってきた。なるほど、
新道を通り抜ける風景である。風邪っぴきの客が
食べている途中に目を合わせるところがあって、
じっとうどん屋が、客が満足して食べているか?
観察している様子が伺われて、こういうところは
細かな所作が光っている。実演でわかる面白さ。
ゲストは三笑亭茶楽という、はじめて聞いたので
往きに調べてみたのだが、八代目可楽の弟子、
師匠の死後、一門の夢楽門下に移っているが、
芸協にこういういい師匠がいたとは知らなかった。
時間的には、コンパクトにまとまっているけれど、
足りなく感じるところはない。滑らかな仕上がり。
最後は小満ん師匠で「雪とん」である。この噺は
師匠がときどき演じていることは知っていたが、
これまで逃していたので、今日はついに聞けた。
小町と深草少将の百夜通いのパロディだが、
江戸見物の若旦那で恋煩いになるのが田舎者、
それに対して、横から邪魔して入るのがいい男で
なんとお祭佐七というのが面白い。この男を扱う、
まさに「お祭佐七」という一席もあり、圓生師匠の
録音も残されているが、最後に船宿のおかみから
「お祭佐七という仕事師の頭ですよ」と聞かされて、
お祭りには欠かせない、引く手数多のいい男で、
「それで出し(山車)にされた」という、オチが付く。
先週の段階では、「雪」の予報も出ていたので、
まさに「雪とん」の情景になりそうだったのだけど、
晴れてくれて、無事に会場に着けてよかった。
というのもこれは、落語では毎度のことながら
冷たい雪の中を一晩中、若旦那を放浪させて、
田舎者を雪ダルマのようにして笑いの種にする…
ちょっとかわいそうな話である。小さな行き違いで
まわりの人たちには罪はないのかもしれないが、
勝ち組、負け組がハッキリとして身につまされる。

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2018年1月22日 (月)

第143回 柳家小満んの会

まさかここまで大雪になってしまうとは…
横浜市内陸部の豪雪地帯にいるもので
夕方、駅に出るのに早速、大変な騒ぎ。
電車は5分程度の遅れだが、減速して、
反対の下り線は、早めの帰宅で大混雑。
早めに出たので早めに到着できたけれど、
大雪の小満んの会ははじめてで、これは
よい想い出になりそう。ちなみに帰りは、
帰宅ラッシュも終わって、電車はガラガラ。
50分遅れの運行だけど、順調に帰れた。
人も歩かず、近所は雪に埋もれていたが。

金原亭駒六:道灌
柳家小満ん:お楠物語
柳家小満ん:花筏
柳家小満ん:火事息子

「お楠物語」は浄瑠璃を落語に移した小満ん師匠の作で
会の案内ハガキにすでにそうした紹介があったのだけど、
帰ってから読み返してみたところ、写真師下村連杖作の
「横浜開港奇談」から初段の「お楠子別れの段」とある。
下村連杖は維新の頃に異人さんから写真の技術を学び、
野毛坂に写真館を開いて、日本人初の写真師として、
活躍していたとそういう説明を聞いたように思うのだが、
つまりマクラも含めると明治維新の「横浜物語」という
そんな印象である。この噺は、横浜の会の限定のネタ?
横浜村の漁師が、野毛坂にある楠の木に打ち込まれた
藁人形の五寸釘を抜いてやったことで、その恩返しに
楠の木の精が女房になってやるのだが、その大木が
伐り倒されることになり、娘への別れの言葉を蓄音機に
録音して残すという、ペルリーが置いていった蓄音機で
師匠もこの辺が荒唐無稽だと、横浜開港の雰囲気が
たっぷりと伝わって、ウソでも幕末明治の空気である。
かつての漁村で横浜村と吉田新田、外国人居住区と
現在の関内、桜木町周辺の歴史だが、市民ならば、
何となくは知っているのだけど、改めて勉強したくなる。
師匠は、益荒雄が十両に上がったばかりの頃から
ファンだったそうで、マクラの相撲ネタが面白かったが、
お馴染みの「花筏」がよかったのである。なぜかというと
提灯屋さんに花筏の代役を頼む親方の貫録がよくて、
つまり関取やその師匠がそれらしく聞こえるかであろう。
本物は知らないので、イメージが大切、ということだが。
仲入り後は「火事息子」であり、師匠のが少し違うのは、
臥煙になった若旦那が病で臥せている母の夢を見て、
うなされているところを仲間に起こされ、夢の話が入り、
付近の火事で実家に戻ってくる理由付けがされている。
楽しく、笑いながらも親子の情愛があふれている噺で
まさに今の冬の乾燥にぴったりの感動的な噺なのだが、
それがまさかの大雪に見舞われるとは、驚きだった。
ということで、次回は3月19日(月)の第144回であり、
「家見舞」「お茶汲み」「花見の仇討」の三席である。

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2018年1月13日 (土)

第289回 柳家小満んの会

今年最初の小満んの会で夕方から日本橋へ。

金原亭駒六:道灌
柳家小満ん:犬の字
柳家小満ん:葱鮪の殿様
柳家小満ん:明烏

2018年は戌年であり、初っ端は犬の噺で「犬の字」から。
「元犬」の元という噺で三代目圓馬師匠の速記を頼りに
ということが案内されていたが、満願の日に毛が抜けて、
人になったところに…ここまでは「元犬」とほぼ一緒だが、
かわいがってくれた上総屋さんの旦那がやって来て、
白犬が人になった経緯をきちんと話し、上総屋の弟で
越後屋さんに恩返しの奉公をしたいと只四郎はいう。
場所が蔵前の八幡様だが、蔵前なので上総屋は札差し、
その弟で牛込の越後屋は、米つながりで搗米屋である。
お馴染みの「元犬」は、上総屋が口入屋でちょっと違い、
その恩返しの奉公の訳はというと、五年前の野犬狩りで
白犬が捕まりそうになったところを越後屋の旦那が助け、
命の恩人なのであり、それで一年間、我武者羅に働き、
上総屋の女中でおもよさんと夫婦にしようと話しが出る。
犬の本性が表れてはいけないと酒を飲ませ試すのだが、
只四郎はすっかり酔って、大の字になって寝てしまった。
肩のところに枕があって、犬の本性が表れたというオチ。
大の字でなくて、それで「犬の字」の題名なのである。
「元犬」の別型でもっと演じられればいいのに。面白い。
続いて、この寒い季節にぴったりの「葱鮪の殿様」だが、
小満ん師匠の「葱鮪の殿様」は以前に聞き逃しており、
今回がはじめてだと思う。ときどき演じられているので
聞いている方は多いと思うのだが、下谷の七不思議が
わかりやすくて、勉強になり、ありがたかったのだけど、
湯島の切通しから上野広小路の様子を説明する中で、
昔からこの「下谷の七不思議」が入っているものだが、
どうも噺が脱線して、流れが分断されている気がする。
そういうものだから仕方ないか。雪の極寒の風景に、
煮売屋から湯気が立ち上り、庶民の雑な料理ながら、
こんなにも美味そうな料理はないと思わせる葱鮪鍋、
それに熱燗の酒であり、その暖かさが最高の贅沢だ。
殿様の衝撃を一緒に味わうと幸せな噺なのである。
そして三席目は、新年にふさわしいお馴染み「明烏」。
二月の初午の情景なので、正月ということもないけれど、
はじめに聞くというイメージもあって、横浜でも以前に、
1月に演じられたことがある。明るい気持ちになって、
実に楽しい。小満ん師匠の「明烏」も有名ではあるが、
文楽師匠と同じく十八番で鉄板ネタという印象がある。
ということで、22日の月曜日は、横浜の小満んの会、
演目は「お楠物語」「花筏」「火事息子」。楽しみである。

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2017年11月20日 (月)

第142回 柳家小満んの会

関内ホールが改修工事中で、今回から
吉野町市民プラザに会場が変更されたが、
この新しい環境に早く慣れなければ。
やはり場所が不便だけど、聞いてみて
高座との距離は近いように感じられた。

柳亭市若:初天神
柳家小満ん:奈良名所
柳家小満ん:なめる
柳家小満ん:お直し

一席目は「奈良名所」で、小満ん師匠がこの噺を演る
ということは知っていたが、聞くのははじめてである。
前半は「二人旅」の雰囲気だが、お伊勢参りの後で
奈良に行くという設定で、この噺も「三人旅」シリーズの
ひとつなのであろう。宿の客引きをかわす場面があって、
逃げにかかるとそこが探していた宿である。一晩泊まり、
翌日、主人の勧めもあって、奈良の名所をまわって歩き、
案内人が洒落たくさんで道案内をしていく。後半になると
江戸っ子二人の出番はなく、そこはちょっと不思議な印象。
その洒落案内であるが、もうすっかり忘れてしまったので、
また聞いてみたいところ。珍しい噺でなかなか聞けない。
「なめる」は2009年1月に関内で、そしてその翌年の7月、
日本橋でも演じられているが、それ以来で久しぶりである。
芝居小屋の様子や上演の仕組みなど、かなり緻密な説明で
格調高くはじまるのだけど、それが後半、この噺は艷笑噺。
師匠で聞くとごくお洒落な情景だが、翌日、お嬢さんの元を
訪ねてみると転宅してしまっている。「転宅」にそっくりだ。
ここで覚えておきたいのが、「守田の寶丹(宝丹)」という薬。
気付け薬ということになっているが、胃腸薬と書いてある。
不忍池のすぐわきにある守田治兵衛商店で1680年の創業。
仲入り後、今年の締めくくりは「お直し」である。この噺は
よく覚えているのは、関内の小満んの会で100回記念のとき
演じられており、それから42回なので、すでに7年が過ぎて、
あっという間に同じく久しぶりということになってしまった。
吉原についての研究発表だと大見世から小見世、切見世、
けころの羅生門河岸に至る吉原を構成する店の詳細な説明、
解説があり、表の大通りがあれば、裏通りもあって、陰日向、
明暗があって、その裏通りの情景が頭に描かれたところで
「お直し」の夫婦の物語となっていく。酔っ払いの左官職人が
滑稽な三枚目で、そこで笑いを取り、ジメジメさせないのが、
いいのだが、そうでなければ、救いのない暗い物語となって、
時間の更新をする「直してもらいなよ」が嫉妬の表現となり、
その意味をどこかで取り違えてしまうところが実に落語らしい。
ということで、次回は新年の1月22日(月)の第143回であり、
演目は「お楠物語」「花筏」「火事息子」の三席。楽しみである。

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